自白剤なんてその程度
「どう思う?」
「そんな漠然としたことを聞かれても……」
「なんでもいい。誰がこいつらに情報を流したのか、予想してくれ」
「……リブレさん、絶対もう予想ついてますよね。僕が考える必要あります?」
「ちょっと予想の範疇を出ないからな。他の人が同じ答えにたどり着いたら、信憑性が高まるだろ?」
文句を言いながらもレインは考え出す。
「えっと、さっきここにいないのはリブレさんが確認しましたから、考えません。で、他の人間の皆さんは訓練に明け暮れてますし、そんなことをしている余裕はなかったのではないでしょうか」
「うん」
「獣人族の方々はここに来てから日が浅いですし、エルフがどのように行動してるのなんか知りません。そもそも、それを人間に伝えるメリットがないですし。あれ?」
そう。
そこまで考えると、協力者がいないことになるのだ。
ある場合を除いては。
「……エルフの人は?」
「え?」
考え込んだレインにプリンセがふと思いついたように言う。
「……まだこの国には、エルフの人たちが、いるよね?」
「いえ、それはそうですけど。でも……」
これ以上ない身内売りだな。
同じ場所に住んでいるから分かりにくいが、種族というのは国籍に近いものだと考えている。
ドルガバに関しては、多民族国家みたいなもんだな。
そのまんまだけど。
何が言いたいかというと、普通なら同種族を他種族に売るようなことは考えづらいということだ。
そもそも、人を売るということは俺たちにとっては考えづらいことだ。
日本でぬくぬくと育ってきてるんだから。
ただ、拉致問題のこともあり、全くの無関係という訳ではない。
だから、俺は割とすぐこの推論には至っていたのだが、信じられなかった。
信じたくなかった、の方が正しいか。
「そんなことを誰が……。でも、考えれば考えるほど……」
レインは混乱がおさまっていない様子。
とりあえず、そっとしとこう。
「ハンネ」
「なんだい?」
「多少危なくても構わない。自白剤を作ってくれ」
「わぁい!!」
自白剤を作ってくれと言われてこれ程はしゃげる人間が他にいるだろうか。
頼っている手前、なんの説得力もないが繰り返し言っておく。
こいつは監視をつけなくていいのか?
自白剤とは、基本的には大脳上皮を麻痺させる機能しかない。
意識を朦朧とさせ、深く考えられないような状態にし、質問に答えさせるというのが本当のところだ。
ペラペラと自分から秘密を喋るようなことにはならない。
なんせ、朦朧としてるからな。
しかし、これは人の脳に作用していることには変わりなく、物によっては死に至るような物もあるらしい。
そして、ハンネが適当に自白剤を作るとしたら、十中八九ヤバイのができる。
嬉々として謁見の間を飛び出ていったハンネを見送った商人たちのリーダーは顔をひきつらせる。
「冗談だよな……?」
「は。あの喜びようが冗談に見えるか? さっきも言っただろ。こちとら時間が惜しいんだよ」
「出来たよ!」
数分後、ハンネが小瓶をもって帰って来た。
スピード重視にも程がないか。
「どんな感じだ?」
「えっとね、数分後には廃人になっちゃうかもだけど。多分数分は大丈夫だと思うよ」
「わかった! 話すから! だからそれだけはやめてくれ!!」
圧倒的な効果。
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