期待に応えないわけにはいかない

「……ところでなんだが、レイン」

「はい?」


2人の姿が見えなくなったところで俺はレインに問う。


「俺とあいつを戦わせるつもりか?」

「その方が手っ取り早いかと思いまして」

「……これ言っちゃいけないかもだけど、俺が負けるかもだぞ?」

「大丈夫です。リブレさんは負けないって、信じてますから」


レインが俺の腕をとりながら、見上げる。



「……それは負けるわけにはいかないな」

「はい!」

「当然じゃな! わしがおる限り主が負けるはずがないのじゃ!」

「……リブレさんは、負けない」


期待が凄い。

キラにはボコボコにされているのだが。

どうやらあれはノーカンらしい。



「あれ? みんな? どこ行ったの?」


ハンネの声が家の方から聞こえてくる。

すっかり忘れてた。


「完成したのか?」


森から家の方へ歩きながら声をかける。


「一応はね」

「流石の早さだな」


まだ30分と経ってないだろ。


「そこはまぁ、ハンネさんだからかな」

「自分で言うな」



よっしゃ。


「じゃあ、今度はもうあれを的にしてしまおう」


さっき誤射してあとがついちゃった木に狙いを定める。


ドンッ!


狙ったところドンピシャではないものの、一応目標の木に当たる。

銃身も爆発しなかった。

凄い精度だ!


「凄いぞ、ハンネ!」

「あたぼうよー。で、あとはこれを人数分複製すればいいのかい?」

「人数分? いやいや」

「え?」

「え? だってこれ、次弾装填に凄い時間かかるぞ? 持ち替えて撃った方が断然早い」


バッ!


身を翻して逃げようとしたハンネの前にキラが現れる。


「こんなところにいたのか」

「げぇっ!?」


女性が出しちゃいけない類の声が出たぞ。


その後は、暴れまくるハンネを涼しい顔で連行していくキラの図が見れた。

哀れだ。



「さ、工作も終わったことだし、夜ご飯の準備でもしようか」


工作に夢中になっていたお陰で昼ご飯を食べ損ねている。


「……でも、もう、材料がないよ……?」

「そうです、リブレさん。食料を売ってくださる町の人も避難しているので、もう僕の家の食料が底をつきそうなんです」

「なんだと!?」


死活問題じゃないか!


「金ならあるのに……!?」


ドルガバの闘技場で得た金が……!

ん、そうだ。


「城になら蓄えはあるはずだよな?」


冒険者の方々にご飯を用意しているはずだし。


「それはそうですけど……。城に買いに行くんですか?」

「それ以外に案はあるか?」

「……とりあえず、お腹すいた……」


プリンセが虫の息だ。


「これは四の五の言ってる場合じゃないだろ?」

「そうですね、行きますか……」

「あ、その心配はいらないよ」


顔を向けると、そこには袋を抱えたキラが立っていた。


「皇后さまからのお達しでね。そろそろ食料が底をつくだろうからって」

「マレイユさん神!」

「あ、もちろんお金もいらないよ」

「神以上か!」


身の丈に合わないお金を持っているのは事実だが、それはそれとして無料は嬉しい。


「ってか、キラ。お前もう今日でここと城を3往復くらいしてないか?」

「うん、そうだね。一番僕に頼みやすいんだと思うよ」


嫌な顔一つせずにするのが凄い。

俺なんかむしろ一歩も家から出たくないのに……。


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