ゴールがあればやる気は上がる

「どうせなら食べていくか?」

「いや、僕はまだ訓練に付き合わなきゃいけないからね。今はこれを届けに来たのと、あのエルフの少年を送っていったところなんだ」

「今から?」


もう暗くなるぞ?


「今回の幻想級ファンタズマルは夜に戦闘になるんだよね? なら夜にも訓練しなくちゃ。夜目が効くようになるのは必須だよね?」

「うーん、そう言われるとちょっと否定しづらいんだが……」


いや待て。


「昼にも訓練はしてるんだよな?」

「うん」

「で、お前がこっちに来てる間は休憩時間だと」

「そうだね。ほとんどの人は疲れて食事の後に寝ちゃってるかな」

「ほう」


そうなると、1つ疑問が出てくるな?


「お前、いつ寝てるの?」

「……あれ? 言われてみれば……」


お前ほんとに人間か?


「悪いことは言わない。お前ここで寝ていけ」

「いや、そんなこと言われても、訓練に行かなくちゃ……」

「それは俺が代わってやる。頼むから休んでくれ」

「お、珍しいね。君が自分から仕事しようと言うなんて」

「前にいつ寝たかわからん仕事なんかクソブラックじゃん。流石に代わってやるわ」


最大戦力に倒れられたら困る。


「じゃあ、お言葉に甘えてちょっとだけ寝かせてもらおうかな」

「あぁ、プリンセ。留守番頼めるか?」

「……ん、わかった」

「じゃあ、ご飯食べたら行くか」



キラを寝かせ、腹ごしらえを済ませた俺とレインは城へと向かう。


城につくと、訓練を受けるであろう人たちが広場に集まっていた。


「あの、キラ様は……?」


代表してエイグが聞いてくる。


「あいつは一旦休ませてる。というわけで俺が代わったわけなんだが、俺にはあいつのような指導能力はない」


キラの指導方法スパルタが正しいかどうかはおいておくとしてもだ。


「というわけでこれの使い方だけ覚えてもらおうと思う」


そう言って銃を掲げる。

ハンネに無理言っていっぱい複製してもらったのだ。

その代償としてハンネは今絶賛気絶中だ。

一応、レインが見たところ別に死ぬようなものではないということなので、とりあえずそのまま寝かせているが。


「とりあえず、1人1丁持ってもらって。で、使い方は簡単、火を点けて、ここを引くだけ」


俺が実際に引き金を引いて示す。


「ただ、人に向けたりはしないように。安全装置セーフティもなにもついてないからちょっとしたことで暴発するからな」


存在は知っていても、その仕組みまでは知らなかったのでどうしても組み込みようがなかったのだ。

急ごしらえのものでもあるし、そこは多めに見てもらいたい。


「で、的を用意するから、それぞれ的の中心部付近に10発当ててくれ。多少狙いがずれるかもしれないが、そのズレは全てに共通してるからな。そこも含めて調整してくれ」


複製しているのでここにあるのは全て全く同じものだ。

自ずとクセも同じになるので調整しやすいだろう。


「当てた終わった者から今日は休んでいいぞ」

「本当ですか!?」

「休むのも訓練のうちってな」


実際はこれ以上やることが浮かばないだけだが。


「ただし、休むと言っても羽目を外しすぎるなよ。明日からまたキラなんだからな」

「はい!」


そこからの皆の動きは迅速だった。

互いの悪いところを直しあい、すぐに訓練を終えて帰っていった。


やっぱりゴールがあると人のやる気は違うな。


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