弟子の募集はしておりません

「で、何してんのお前」


レインのフォローに小躍りしそうな精神を諫めて、冷静を保つように努める。


「それは……」


{後ろめたさ}か……。

俺は空いてる右手で頭をがりがりかきながら考える。


「どうやら見張りではないみたいだが。それはあっちのやつだろうからな」


そう、見張りがつかないほうがおかしいのだ。

隙あらばレインを奪ってしまおうという考えだろう。

だが、そもそもこっちも警戒しているのに隠れるのが下手なので隙なんて見せるわけがない。

むしろ、目の前で工作するという寛ぎっぷりである。

まぁ、それは今はいい。


「どうしてそれを……」

「こっちの手の内を明かすわけないだろ。いいから質問に答えろ」


偶然の産物で見つけられたというのはおいておいたとしても、見張られていたというのは気持ちのいいものではない。


「場合によっては……プリンセが出るぞ」

「……わたし?」

「俺とレインが出るのも違うかなって」

「……わかった。がんばる」


プリンセの承認を得たところで。


「というわけだから、心して答えたほうがいいぞ」

「レインちゃんを見に来ました」


「……知り合い?」

「……知り合いと言えば、そうですかね」

「子供の時は一緒によく遊んだじゃないか!」

「そうですね。あなたが僕を無視し始めるまでは」


レインの俺を握る力が強くなる。

痛い痛い!


「仕方なかったんだ! あぁしなきゃ僕だって無視されてしまうんだから!」

「僕にとって無視されていたという事実は変わりません。お帰り下さい」


「僕は! 君に会いに来たんだ!」

「知っています。その上で、僕にあなたと話す意思はないです。お引き取り下さい」


厳し……。



「そんな人間やつと手をつないだりしちゃって! エルフは人間よりも上位種族なんだ! 人間なんかと関わりを持つべきではないんだ!」

「{嘘}だな」


多少ムキになっているきらいはあるけど。


「良かったです。もうちょっとで手が出るところでした」

「……フゥー……」


背中でプリンセが威嚇してる。

こっちももうちょっとで出そうだったな。



「レイン、あっちだ」

「了解です」


レインが視線を向け、魔法を唱えると監視役のエルフが土に包まれ、その土を俺の指示を受けたオーシリアが固める。

これで出てこれないだろ。

うかつに近づきすぎだ。


「よし、もういいぞ」

「ごめんなさい! 大人がいる手前、あんなことを言わなくちゃいけなかったから……」

「僕じゃなくてリブレさんに謝ってください」

「ごめんなさい……」

「あぁ、それはいいよ」


こいつが多少はそう思ってたのは事実だしな。


「むしろ子供で親に俺たちを嫌うように教育されていたのに、多少嫌悪感が小さいのはまだ良い方だな」

「……」


レインはほんとに口を利く意思はないようだ。


「で、結局要件はなんだ?」

「そうです、僕を、弟子にしてください!」

「……俺の?」

「はい!」


何故。

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