恩人の頼みは無下にはできない

え、だってこういうことだろ?


「自分たちが馬鹿にしていたやつがいつの間にか偉くなってて悔しい! 実力をみないことには納得できない! かと言って自分もやりたくはない! だから1番強い奴と戦ってみてくれよ! って?」

「そこまでは言ってないんじゃないですか?」

「いーや、今{劣等感}にさいなまれてる奴はこんぐらいのことは考えてる」


キラにボコられて自信なくしたっぽい。


「まぁ、俺としてはそんな人の{優越感}回復のために粉骨砕身する必要はないわけだ。誰がやるか」


俺は踵を返し、城へと向かおうとする。


「少年! 俺からも頼む!」


……この声は聞き覚えがあるぞ。


振り返ると、そこには俺がこっちに来た日になぜ全員レベルが高いのかを教えてくれたおっさんが立っていた。

あんたかー!


「こう言っちゃなんだが、俺はまぁまぁ逃げれた方だ。しかし、それでもキラ殿には遠く及ばない。キラ殿と同格である少年ならどのような対応をするのか、見てみたい」

「同格?」

「呼び捨てにしていただろう。ならば同格なのではないか?」

「立場が著しく違うね」


参謀の座もレインに譲ったし。


「なら、レインにやってもらえばいいじゃないか」


そう言ってレインを振り返ると、そこにはオーシリアしかいない。

めっちゃ遠くにプリンセと一緒に避難していた。

なんか口が動いているので、少し目を凝らす。


あんあえうああい……。


……。


、かよ!?


「じゃあ、皆さんには城の中腹くらいまで登ってもらおう。上から見たほうがいいだろうからね」

「わかりました、キラ様。皆さん! 私についてきてください!」


俺が読唇に気を向けてる間にいつの間にかいたエイグにキラが指示を出してる。


「おいぃ!?」

「さ、やろうか!」


マジでそのにこやかな顔をぶん殴りたい。



「リブレさーん、頑張ってくださーい!」

「……がんばれー」


レインとプリンセは冒険者の皆様と一緒に上に上がって物理的に高みの見物。

そうか、なんかこっちに来てから物理的に高みの見物っていうワードが浮かぶ機会が多いなと思ってたけど、そりゃそうだ。

俯瞰してみるほうがいいに決まってる。


「……主」

「……なんだ?」

「どうするのじゃ」

「どうって言ってもな……」


みんなが見ている場所の更に上。

王族の皆様や二つ名ダブル持ちの皆様が見物してるのがわかる。

表情とかまではわかんないけど、どうせ楽しんでるんだろうなぁ……。

後で覚えとけよ。


「じゃあ、ルールはどうしようか?」


キラはウキウキだな。


「リブレ君との単純な勝負は初めて会った時以来だろう? そりゃ楽しみさ!」

「鬼ごっこだけどな」


無邪気かよ。


「じゃあ、俺が逃げ始めてから1分待ってくれ。こっちからの妨害は?」

「もちろん、ありだよ。だって、僕もこの力使うんだから」


そう言って雷を纏った手を掲げる。

……。


「主、生きて帰れるかもうわからんのじゃが」

「……そうだな」


帰りたい。

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