クソゲーには手を出すな

「なんだありゃ」


オーシリアに上への階段を作ってもらって上空10メートルから下の様子を伺う。

ちなみにプリンセは背中にしがみついてるし、レインを抱えているので恐らく40キロくらいの重りを俺は今持ってるんじゃないだろうか。

それ以上かもしれない。

動けん。


「これ……なに……?」

「……」


レインはまだ起きない。


次の瞬間。


「がっ?」


俺たちの真下にいた冒険者がその場で崩れ落ちる。


「……キラだな」

「……キラさんだね」

「……」


レインはまだ起きない。


そこからは次から次へと冒険者たち、兵隊たちが倒れていき、通りは死屍累々の地獄絵図だった。


「なにしてんだあいつ」

「……なにしてるんだろうね?」

「……うっ」


あ、起きた。



「で、なにしてんの?」

「なにって、選別だよ。ほら、誰を誰が鍛えるかはこっちに一任するって言ってたじゃないか」

「言いましたけども?」

「で、何が手っ取り早いかなと考えたら、僕から逃げることが出来る人は強いだろうって話になったんだよ」

「いや、いないだろ」

「いないですね」

「……いないと思う」


復活したレインも含めて3人で否定する。


「そうかな?」

「そうだろ」


二つ名ダブルなんてチートバグみたいなもんなんだからクソゲー認定まっしぐらだぞ。


「ある程度逃げれればいいと思ったんだけど……」

「で、タッチじゃわかりにくいから手刀にしたと」

「……一応、了承は取ったよ?」

「当たり前だ。そもそもお前に言われて意見できるやつなんざそういないだろ」


うんうんとレイン、プリンセ、おまけにオーシリアも頷いている。


「いい考えだと思ったんだけどね……」



キラの感情が{無念}から{好奇心}に変わる。


「……リブレ君とかレイン君ならどうなんだろう」


そっちかー!

俺たちは2人揃って首を横にぶんぶん振る。

なんだその自殺行為は!?


「やってみないかい?」

「絶対に嫌だ」



「……やってみてはくれないだろうか」

「うん!?」


思わぬ方から声が聞こえて俺は耳を疑う。

それはキラにのされて意識を失っていた冒険者の一人が口にしたものだった。


「えーっと……?」


見覚えはあるんだけどな……。


「俺の名前なんざ知らなくても無理はない。こう言えばわかるか? あなたをレベル1だと馬鹿にした者だと」

「……あぁ!」


俺はポンと手を叩く。

道理で!


「僕も見覚えがあると思ったらそういうことでしたか」


レインもそういやあの場にいたな。


「で、久しぶりで悪いが、こうお答えしよう。なに言ってやがる馬鹿野郎!」


何を好き好んで理不尽の権化にやられに行かなきゃならんのか。


「無理な願いだってのはわかっている。だが、俺たちが馬鹿にした奴が一瞬にして国の重要人物になりやがった。それも実力で。俺たちを指揮する立場に。なら、その実力の一端でもいい。自分が立ち合いたいとまでは言わない。見せて欲しいんだ」

「……え? なんか理論だてられた感じしたけどクッソ理不尽なのなにも解決してないよね? むしろ悪化したまであるんじゃないか?」


「リブレさん、そういうのは言わない方がいいと思います……」

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