順法精神ございますよ?
王様から逃れることは早々に諦め、必死に頭を働かせる。
もちろん、逃げることを諦めたわけではないが、俺ではこの筋骨隆々のおっさんから逃れるなどシンプルに不可能だ。
「王様、あの国内放送みたいなやつはエルフには聞こえないようになってるのか?」
「いや? 一応は国内に住んでおるんじゃから、あれが聞こえないということはあるまいよ」
「そうだよなぁ?」
レインが知らない様子だったのがさらに謎になる。
どうやってレインに知らせないようにしてたんだ?
まぁ、俺が言っちゃったから流石にもう知ってるし、レインなら真偽を確かめようとしてるはずだけどな。
やっぱり一番手っ取り早いのはレインにこの事を伝えて説得することか?
しかし、俺の話には耳を貸さないとか言ってたしな……。
キラに頼むか?
にしてもそうか、レインと会うのがまず難しいんだった。
また潜入しようにも流石に警戒されてるだろうしな。
ヤバい、どうする?
「? リブレさん、何したの……?」
上から声がしたと思ったら、プリンセが困惑したような顔で王様に組み伏せられている俺を見下ろしていた。
家事を終えたら来ると言っていたので終わってから歩いてきたのだろう。
「プリンセ……。そこは『何したの』じゃなくて『どうしたの』だろ……。俺がなんか犯罪して捕まったみたいじゃないか……」
「うん、ごめんなさい。遂に何かやったのかと思っちゃった。違うんだね」
「『遂に』ってなに!?」
普段からいずれなにかやらかすと思われてたの!?
俺けっこう順法精神ある方だと思うけど!?
「あ、でもここには女の人いないね。大丈夫か」
「それはどういう意味だい?」
俺は性犯罪者か?
「ちょうど良い。プリンセよ、リブレを抑えておいてくれんか?」
「? なんで?」
「リブレが自殺に等しい特攻しようとしておるからな。流石にそのような事をさせるわけにはいかんじゃろ?」
「うん、そうだね。死ぬのはダメだね」
王様が放してくれる代わりにプリンセが俺の上に陣取る。
「あの、プリンセさん?」
「ん? なに?」
「俺、動こうと思えば動けちゃうんですけど……」
力で押さえつけるわけでもなく、ただただ上に乗ってるだけだ。
俺が跳ね起きるとプリンセが吹っ飛ぶだろうからしないけど。
まぁ、ネコ科だから楽々着地するんだろうけど。
「大丈夫だよ? いざとなったら……、怪我はしょうがないよね?」
「わかりました、すいません、動きません」
オーシリアが協力的じゃないから俺は魔法を使うこともままならない。
使おうと思えばそりゃ使えるのだが、オーシリアが近くにいないと効率が悪いし、ステッド・ファストを俺が使えば固まってしまうのでどうせ逃げられない。
詰んだ。
「と言ってもどうするんだよ王様よぉ!? このままじゃレインがやばいんだぞ!?」
「少なくともそのまま突っ込むのは得策ではあるまいよ」
「アポとれるのか?」
「レイン君となると、厳しいじゃろうな」
「どうすんだよ」
「それをこれから考えるんじゃろうが。お主はレイン君のこととなるとすぐに動きたがるからのう。自重したほうが良いぞ」
「いや、否定はしないが、今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ?」
確かにレインのこととなるとムキになりがちだが、仕方ないだろ。
仲間のあんな美少女放っておけるか!
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