最優先は人身保護です

「ハンネよ、マレイユとルーリア、ケイン、エルメを呼んできてもらえるかの?」

「わ、わかったよ」


ハンネがバタバタと出ていく。

玉座に戻った王様に俺は聞く。


「おい、キラは呼ばなくていいのか」

「心配はいらんぞ。あやつは自分がいるべきだと思われてるところには必ず顔を出すからのう」


なにその特殊能力。

こわ。


「お呼びですか、王よ」

「ほらの」


そんなことを話してるとキラが登場。


「少し面倒ごとができてのう。少し話し合わねばならんのじゃ」

「それはそこでリブレ君がプリンセ君にのっかられているのと何か関係が?」

「まぁ、関係はなくもないのじゃが……」

「いや、それが全てだろ!?」


「いやー、それはリブレの趣味でー」みたいなニュアンスを含むんじゃないよ!?



このくだらないやり取りの間にハンネに呼ばれた面々が続々と集まってきては俺の状況を見て一瞬驚いた後、「なんだリブレか。ならしょうがない」みたいな顔をしてキラがまたどこかから持ってきた円卓に座っていく。

俺のイメージは君たちの中でなんなの?


「プリンセ、もう大丈夫だ」

「落ち着いた?」

「あぁ。それよりもこの面子から逃げられるほど俺は色々と強くない」


悲しいことだが。


「では、ハンネ。皆に現状を説明してくれるかの?」

「了解。えっとね、エルフの文献を見直してたんだけど……」


「そんなの酷いじゃないの!!」


話が終わるか終わらないかのうちにエルメが立ち上がって叫ぶ。


「自分が死にたくないから代表者を生贄にして助かろうって!? 馬鹿言ってるんじゃないわよ!!」


想像以上の激昂だ。

エルメは俺を探している時にレインと一緒に旅をしていたらしいからな。

より思い入れも強いのだろう。


「あぁ、絶対にそんなことにはさせない。そのためにみんなの協力が欲しい」

「もちろんよ! 私にできることならなんでもやるわ!」


エルメが勢いよく同意するとそれに続いて全員賛同してくれる。


「よし、意見が一致したところで、王様。今回一番やっちゃいけないことはなんだ?」


プリンセを膝にのせながら俺は王様に問う。


「単身で突っ込んでいくことじゃろ」

「違うだろ。今回は、ロクな解決策もなくむざむざレインを生贄にしてしまうことだ」


そんなことになるぐらいなら特攻でも仕掛けるほうがましだ。


「で、例の幻想級ファンタズマルが来るまでは?」

「あと1か月ほどかの」

「つまり、そんなに時間をかけてる暇はないんだよ。エルフ達もここに幻想級が到着するまで悠長に待ってないだろ。もっと先に仕掛けるだろうよ」



「……確かに、レインちゃんに会うのが一番手っ取り早いのでしょうね」

「本気かの?」


何かマレイユさんと王様がこそこそ話している。

てかマレイユさんはレインのこと「ちゃん」付けで呼んでたっけ?

二人の間で何らかの合意があったのかマレイユさんが俺に向き直る。


「リブレさん、わたくしはエルフの町に行くことを推奨します」

「それはどういう意味でだ?」

「もちろん、武力的な意味でです」


さっき突撃しようとしてた俺が言うのもなんだが、えらいこと言ってるぞこの人。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る