エルフの秘策

「どうしてエルフが自信満々なのかわかったよ!」


自信満々なわけではないだろ。


「どうしてわかったんだ? いや、まずは結論を聞いた方がいいのか?」

「それがさ! 一旦見終わった後に興味深い文献だなと見返してたんだよ! 特にここ最近に書かれたようなものをね! そしたらわかった! わかってしまったんだよ! エルフの策が!」

「とりあえず落ち着くのじゃ。して、何があった?」

「あ、あぁ、よし。落ち着こう。あたしとしたことが冷静さを欠いてしまったな」

「うん、もうツッコまんから。でなにがあった?」

「エルフ達はな、どうやら生贄を捧げれば事は解決すると考えているらしい」




「どうやら、前回の幻想級ファンタズマルとの遭遇でそういう結論に至ったらしいんだよ」

「生贄を出せば襲われないって? 馬鹿言え、前回って言ったらあれだろ? レインの両親が身を挺して……」


そこまで言って俺も気づく。


「おい、嘘だろ? いくらなんでも短絡的じゃないか?」

「彼らは、レイン君の両親を生贄として考えたようだね。そして、前回来た幻想級は今回のと一緒らしいよ。なにせカイル殿が言ってたからね。確かだろう。属性は吸収。エルフ達は質の高い魔力、つまりMPを吸収することでエネミーは目的を達するのではと考えたわけだよ。実際、前回は襲われていないわけだしね」


全くもって根拠ないじゃん。

結果的に、レインの両親が強くて、その二人を倒したエネミーが偶然襲ってこなかったんだろ?

カイルさんが幻想級までなると人間がいるかどうかなんて気にもかけないって言ってたからな。

本当に偶然だ。



「え、ちょっと待てよ」


俺は引っかかった言葉について言及する。


「質の高い魔力MPって言ったか?」

「……そうだね」


俺は少し思考停止した後に猛然と走り出す。



ダァン!!


いきなり目の前が床になったと思ったら、俺は床に押さえつけられていた。


「離せよ、王様!」

「それはできんな。なにせ今、前回と違ってお主本気で乗り込もうとしておったじゃろ」

「当たり前だ!」


王様の言う前回とはレインがエルフのとこにいるってわかった時だな。

あの時は切羽詰まってなかったからだったが、今回は話が違う。


「次に生贄とされるのは十中八九!?」


レインの両親二人でエネミーにとって事足りたとエルフ達は思ってるわけだろ?

ってことは優れた二人に対応するのはちょっと優れた奴五人、もしくは超優れた奴一人だろ。

となると五人より一人ってことでレインが差し出される可能性が高い。

となると、エルフ達にしてみれば生贄が自分から戻ってきてくれたことになるわけだ。

そりゃあの歓待ぶりも頷ける。

加えて、レインは幻想級が迫っていることを知らないようだった。

騙すか、引き返せないとこまできてからそれを告げて、どうにか生贄の役割を果たすようにさせるんだろう。



「おい、オーシリア! なぜ守らなかった?」


横にしゃがんでこちらを見ているオーシリアに聞く。


「主は特攻しようとしておったじゃろ? 主が死んだらわしも死ぬのじゃ。主がむざむざ殺されに行くのをわしは看過しなかっただけじゃ」

「くそ!」


オーシリアは俺自身が一番大事だからな。

こういう判断をするときもあるのか。

だが、このままではレインが危ない。

どうすればいい!?


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