戦闘中の会話は控えめに

「えっと、考えられるのは3つくらいかな」


これから自分を襲おうとしている人間を前にして呑気に推測を始める。


「敵を目の前にしてそのような態度! その判断は間違っているな!」

「いやぁ、そうでもないと思うぞ?」


4人そろって斬りかかってくるが、ステッド・ファストにぶつかって止まる。


「なんだこれは!?」


毎回思うけど、俺にステッド・ファストで行動を制限された奴ってかなり驚くよな?

そもそもこの魔法ってけっこうポピュラーな方じゃないのか?

一応全員ができるようになってるんだろ、この魔法は。


「それだけわしとかを使ってくれるものがおらんかったということじゃよ、主。誰も使っておらんければ、誰も知らんじゃろうよ……」


悲しい!

そんなに認識が消え去ってしまうくらい誰も使ってなかったのかよ!



「ぐ、ここよりさきに進めない!?」

「えっと、1つ目は単純に俺に対するものか。例えば、俺がプリンセと一緒にいることが不敬だとか、エルフであるレインと関わっているのが気にいらないとかかな」


空気の壁の向こうでどうにかしようとしている4人を尻目に推測を続ける。


「で、2つ目は俺の二つ名ダブルに関してかな? 俺が二つ名に釣り合わないとか、自分たちの方がふさわしいとか、そういうことか。

っと、そろそろかな」


4人が目の前に出てきたので意味のなくなったスルー・アイを小太刀を抜きながら解除する。


「ここは俺たちには通れない! 魔法だ!」

「そういう判断が遅いんだよ」


4人は向こうからサイト・ファイアみたいな指定の場所にいきなり魔法を出せるタイプの魔法を使ってくるが、悉く小太刀で処理していく。

こういうのはダンジョンとかで鍛えられたなって思うな。

度胸っていうか、場慣れしたかな。


「で、3つ目はエイグかな? エイグが努力しているのに俺が一足飛びに二つ名を貰ったのが気に食わないということかな。……当たりかよ」


俺がわざわざ思いつく理由を言っていったのは反応を見るためだ。

こういう時に便利なことに感情は見えるからな。

これを利用しない手はない。


「それはなんだ? エイグに二つ名が与えられないことに憤っているのか? それともエイグに俺を始末しろとでも言われたのか?」

「あの方がそのようなことを言われるものか!」


おっと。言い過ぎたか?


「エイグ様は我らの中でも最も努力家で仲間に対する気配りも忘れない立派なお方だ! 例えお前がどれだけ気に食わずとも、このような卑怯な手段は使わない!」

「そうなるとお前らはその尊敬するエイグの主義に反することをやってるわけだがそれはいいのか?」

「……必要悪というものだ。エイグ様が知らなければ、それでいい」


俺を殺す気満々かよ。

しかし、そうなると口封じのためにプリンセも殺ってしまうってことか?


「プリンセはどうするつもりだ?」

「こちらには記憶操作に定評のある者がいる。問題はない」


なるほど。

俺だけはほんとに殺るつもりだなこいつら。


しかし、必要悪ねぇ……。

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