鎧は暗殺に向かないでしょう
「プリンセ、オーシリア、ちょっと降りてくれ」
「なんで?」
プリンセを床に降ろしながら視線を壁の向こうに向ける。
「どうやらきな臭いことになりそうだ」
スルー・アイを使って壁の向こう側を見ると、数人の男女がいた。
明らかに武装してるし、{敵意}も見える。
こんな場所で{敵意}振りまいてる奴とか絶対俺目当てだからな。
しかし、そいつらとは全く面識がない。
どういう経緯で俺は恨みを買ってるんだ?
襲われるとかよっぽどだぞ。
俺がどうしようか考えていると、リーダーらしい、見た目は俺と同い年ぐらいの男の指示で仮面みたいなのをつけた。
あ、やばい。
これ実力行使のやつだ。
「とりあえずは身を守らなきゃな。オーシリア、ステッド・ファストだ」
「そこの通路の入り口でよいかの?」
「あぁ」
十字路の俺たちがいる道の方を塞いでT字路のようにする。
まぁ、透明だから俺とオーシリア以外は見えないけどな。空気だし。
俺たちにとっても進路を塞いでしまった形になるのでどうすることも出来ずに出てくるのを待つ。
しかし、彼らの視線は通路の曲がり角の方から動かず、動く様子はない。
これはあれか。
俺が十字路に姿を現した瞬間に横から奇襲を仕掛けようってことだったのか?
めちゃくちゃに物騒なことしてやがる。
このままだと埒が明かないな……。
「おい、そこにいるだろ? 俺たちがそこを横切ることはないぞ。とりあえず出てきてくれないか?」
とりあえず、呼びかけてみる。
「……それなりの実力はあるようだな」
ガシャガシャと鎧の音を響かせながら4人が曲がり角から姿を現す。
鎧着てる俺が言うのもなんだけど、さすがにその重鎧は闇討ちには向かないんじゃないか?
行動も制限されるし、鎧がぶつかる音で気づかれるだろ。
「また物騒な格好してるな。もしかしなくても俺に用事があるんだろ?」
「状況判断も早い。ふん、それなりの資格はあるようだな」
資格?
あぁ、そういうことか。
「お前ら、
「頭も回るか。まぁ、そこが二つ名を戴いた決め手と聞いている。その程度はやってもらわねば困るがな」
いやいや、お前らどういう目線で言ってるんだよ。
「……このことをエイグは知っているのか?」
「そんなこと、お前に関係ないだろう……」
「それもう知らないって言ってるようなもんだからな?」
むしろさっきの今でこんなことされてたら俺はエイグの二重人格説を推してたところだね。
「で、なんで俺を襲おうとか思ったわけ? そんなフル装備で。なんか俺恨みを買うようなことしたっけ?」
なんの心当たりがないというのも困りものだ。
何か心当たりがあれば「あれのことかな?」って感じで素直に対応できるものだが、何もないとなるとまず何が目的なのか聞かなきゃいけなくなる。
「今から倒す相手に、そのようなことを話して何の意味がある」
「いや、ほんとそうだと思う」
死ぬ前に話してやろうとか言ってる奴は結局殺すことより自己顕示欲が勝ってるわけだからな。
ロクなもんじゃない。
そもそも人を殺そうとしてる時点でアウトなのだが。
「じゃ、推測するしかないのかー。知らないぞ? 適当なこと言っても怒るなよ?」
十中八九怒るだろうが。
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