科学者は自由にさせてはいけません
城までの空中散歩の道中。
さっきまでは気持ち悪さで余裕がなかったので気づかなかったのだが、俺が抱えているプリンセは首にしがみついたまま目をつぶっている。
「高いところが怖いのか?」
「こんな高さ来たことないもん……」
「それもそうだな」
正確にはわからないが、地上何十メートルを見えない足場に乗って移動しているのだ。怖がらないほうがおかしいか。
ネコ科は高いところが得意っていっても限度がある。
「おっとと……」
風にあおられながらも謁見の間のバルコニーに辿り着くと、キラが窓を開けてくれた。
「やあ、待ってたよ」
「よく俺たちがここから来ることがわかったな」
我ながら非常識極まりない登場だったと思うが。
「下で騒ぎになっていたからね。『リブレ様とプリンセ様が空へ消えていった!』ってね?」
「そうか」
まぁ、騒ぎにならないほうがおかしいだろう。
中に入ってプリンセをおろし、周りを見渡すと謁見の間が様変わりしていた。
普段はだだっ広いだけの謁見の間に1つの大きな円卓とその周りにいすが置かれていた。
円卓の周りに座っているのは、まず王様、マレイユさん、ルーリア。
そして
双子のタンドルとチンドル。
このあたりはお久しぶりだな。
「リブレ君の席はこっちだよ」
キラに案内されて俺はキラとエルメの間に座る。
「身体は回復したようじゃな」
俺が座ると同時に王様が口を開く。
「まぁ、それはそこのマッドサイエンティストがなんかしたからな」
俺が目を向けると、ハンネはこっちにピースしてきた。
いや、別に感謝してるわけじゃないから。
「でじゃ、本題に入る前にお主の後ろにおるその子の説明をしてくれんかの? 連れ子か?」
「どうやってもその結論にはならんだろ!? こいつはオーシリア。俺の杖だ」
オーシリアに杖に戻ってもらってそれを掲げる。
「は!?」
全員が驚愕して固まる中で1人だけ動くものがいた。ハンネだ。
勢いよく立ち上がって円卓の上をこちらへと凄い速さで走ってくる。
俺はパッとオーシリアを離すと、オーシリアが人の姿になってステッド・ファストを多重発動。
ガツンッ!!
えぐい音を出してハンネが壁にぶつかって止まる。
この展開は予想出来てたからな。先に打ち合わせといてよかった……。
「ハンネ、それ以上こっちに来るなら本気で抵抗するから」
俺は小太刀を抜きながら本気であることを示す。
「……どうしても?」
「どうしても」
ハンネが上目遣いで聞いてくるがにべもなく断る。
正直、理系美人的なハンネの上目遣いはぐっとくるものがあったが、それ以上にオーシリアを実験台にさせてはならないという理性が勝った。
最悪無事には戻ってこれないだろうからな……。
「ハンネ、戻るのじゃ」
ハンネは王様に言われてしぶしぶ自分の席に戻る。
「どういうことか説明してもらえるかの?」
俺はダンジョンであったことをかいつまんで説明し、オーシリアのような化身が出てくる可能性についても言っておいた。
「ほんと、君は凄いね……」
他のみんなは化身という未知の存在に驚いているようだが、1人だけ先に知っていたキラは他に気になることがあるようだ。
「なにがだ?」
「普通、ダンジョンの攻略法はそうじゃないからね」
ん? 道順に進んでボスを倒すんじゃないの?
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