規格外共

「本来、ダンジョンっていうのは1人で攻略できるようにはできてないんだよ」


うん、知ってるけど。だからパーティーってもんが存在してるわけだからね。


「で、僕らの予想としてはリブレ君はほとんどの敵をスルーしてくると思ってたんだよ。そもそも攻撃力がないことはわかってるしね?」

「うむ、主の攻撃力のなさには驚かされるばかりじゃからの」


余計なことを言うな。


「となると、君は僕らが考えられないような姑息な手を使ってボス部屋までは攻略すると思ったんだよ」


ほう、俺の評価はそんな感じなんだな……。



「しかし、君はわざわざ全てのエネミーを排除してから進んだという。これは評価するに値すると思わないかい?」

「いや、俺は攻撃力以上に自分の防御力に自信がなさ過ぎて慎重になってただけだからな。評価も何もないと思うが」

「さらに言えば、君はほとんどの冒険者が太刀打ちできないゴーストも倒したんだよね?」

「え? そもそもゴーストってエネミーじゃないだろ?」

「え? そうなのかい?」


……話がかみ合ってないぞ?


「いや、だからゴーストは魔法で出されてるやつであって、あそこにいたエネミーはねずみだろ?」

「あ、なるほど。そういうことになっていたのか」


「説明してくれ」

「えっと、もともと僕らはゴーストがエネミーだと思ってたわけだよ」

「ふむ」

「そして、君もわかってると思うけど、あれらには物理攻撃も魔法攻撃も当たらないんだ」

「そうだな」

「となると、冒険者たちにはお手上げになってしまって僕らが出て行ってたってわけさ」


「でもお前らも知らなかったんだろ? どうやって倒してたんだ?」


「僕は倒さなくても通り抜けられるし」


とキラ。


「私はそこらへん一帯を燃やしたら出てこなくなってたわ」


とエルメ。


「俺は周りに熱線レーザー撃ちながら行ってたらなんとかなってたな。わはは!」


とケイン。


「この規格外ばけものどもがぁ!」



「しかし、そういう仕組みなんだとわかれば他の人たちでも対処できるようになるかな。貴重な情報だよ。そんなことしてたんだったら、かなりレベルも上がったんじゃないかな?」

「あぁ、48まで上がったらしい」

「ダンジョン1つを1人で制覇して48にしかならないのか……。まぁ、リブレ君だししょうがないね」


あ、やっぱりこれでも上がってないほうなのか。


「ともかく、リブレ君を強くするっていう目標は達成できたからよかったってことにしようか」

「死にかけてなかったら良かったんだけどな!」


本当に何度死にかけたかわからんからな。



俺はハンネが自分の席から動かないことを確認してここでやっと自分の席に座る。無論、ステッド・ファストは維持したまま。


一旦話が落ち着いたのを確認してプリンセが俺の膝の上に座る。


「どうした?」

「ううん。なんでもないよ?」


こちらを見上げてニコッと笑う。


……天使かよ。




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