極悪実験

「いや、リブレ君が困っているという情報を聞きつけてね?」

「聞くな」

「これはあたしが助けなきゃと思ってね?」

「思うな」

「急いで薬を調合してね?」

「するな」

「君に処方してやろうとこうやってとんできたわけだよ」

「いや、人の話を聞けよ!? 急いで調合したってことはどうせ思い付きのやつだろ!? 処方してやるとかいいことな風に言うな! 実験したいから気分がのってるだけだろ!」


ほんとにこいつやばい。初対面の時並みに目がランランと輝いている。

貴重な実験サンプルが目の前に転がってると科学者ってこういうことになるんだろうか……。



「はい、じゃあ打つよー」

「待て待て待て待て! いたっ! な、何の説明もないのに打つとかある!? どこからともなく注射器出してくるなよ! まず何の薬としてそれは持ってきたんだよ!?」


痛いのを我慢して全力で訴えかける。

わけのわからない新薬、しかも薬かどうかも疑わしいやつを問答無用で打たれるとかどんな拷問だよ。

よく城の奴らもこいつをほいほい外に出せるな!?

城の外で何やってるかわかったもんじゃないだろ……。


「あれ? 言ってなかったっけ? これは筋肉痛を鎮めるものとして作ってみたものだよ」

?」

「なにしろ急なことだったからそこらにあるものでしかできなかったけど効果はあると思うよ?」

? ?」

「まぁ、副作用もあるかもしれないけど、そこはしょうがないということで……」

「いや、一つもしょうがないことなかったぞ!? やっぱり思い付きじゃないかよ!」


こいつ自分が言ってることわかってるのか?



「ね、ねぇ……」

「ん? 何かな、プリンセちゃん。君もこれ打たれてみたい?」

「い、いや、ごめんなさい……」


あぁ! 抗おうとしてくれたプリンセもハンネの狂気的な笑みの前に引き下がってしまった。

オーシリアに至っては危険を感じたのか杖に戻ってやがるし。


「そ、そうだ! ステッド・ファスト!」

「ん、なんだいこれは」


いよいよ危なくなったのでステッド・ファストで身を守る。

これでどうにか帰ってくれないかな……。



「邪魔だね」


ガガァァーーン!


ハンネが懐から取り出した爆発物によって一瞬で破壊される。

しかも張りなおす前にハンネが俺まで到達してしまった。

なんでこの速さで俺のところまで来れるんだよ!


よく見ると、ハンネもかなりの大けがをしていた。


「そこまでするか!?」


自分の命と天秤にかけて実験が勝ったらしい。さすがマッドサイエンティスト。



「はい、打ちますねー」

「あああぁぁぁぁーー……」


首筋に注射を打たれる。


「これで明日には直ってるはずだよ。理論上はね? じゃあ、また城かあの世で会おうね?」

「殺すなよ! お前だけ地獄に落ちやがれ!」


やることやってハンネはふらふらと帰っていった。

色々大丈夫かあいつは……。


いや、俺もよくわからんもの注射されてるから経過観察が大事だ。

いきなり死んだりしないよな……?

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