弱いやつから倒しましょう

「もしかしてこれが最善のパターンだったんじゃないか?」

結果から言うと、どうやらグループ単位での召喚だったらしい。

出てきたゴーストを1体だけ残してそいつをオーシリアにステッド・ファストで囲んでもらって身動きできなくしたら増えなくなった。


よし、これで大丈夫だ。

そう思って振り返ると目の前にゾンビがいた。

「お前も出てくるんかい!!」


ここで余談なのだが、俺はオーシリアに指示を出すことで魔法を使ってもらえると本人(杖?)から聞いていた。しかし、それは通常であればの話だ。

俺たち二つ名ダブル持ちは

端的に言えば今までと同様に俺が念じるだけで魔法は発動するようになっている。

これは詠唱時間をなくしていたことが作用していたものだと思われる。


「おぉっ!」

ゾンビの大振りのフックを自分の動きとディレクト・シフトを利用して避ける。

ディレクト・シフトは地下1階のゾンビ掃討と際に多用したことによりずらせる角度が大きくなっている。

それでもまだ自分からそらすまでには至らないのだが。


「危なかったな、主!」

「気づいてたなら助けろよ!?ってか『主』?」

「うむ、所有者をお主などと呼んでいいものかと思い至ってな。『主』と呼ばせてもらうことにしたのじゃ」

「別にいいけど絶対にそれ今じゃないよね!?」

少なくともボスの対岸に逃げながら他のエネミーを倒してるっていうこの状況でやることではない。

そんなこと考えてて助けなかったんだったらまじで怒るからな!?


ゾンビの手足をチェーン・バインドで縛るようにオーシリアに指示しながらひたすらボスから逃げる。

どうやらボスが完璧にこちらを追ってくることはないようだ。攻撃のモーションの一環としてこっちに向かってくることはあるからそこさえ気を付けて避けていればいい。

さらに言えば、今回はゾンビを始末する必要がない。

ここのゾンビは速いが、パワーはそれほどではない。バインドを突破してくることはないのでそこらへんに放っておけばいい。



というわけでこれで実質タイマンになったわけだ。

「わしもおるのじゃぞ!」

「お前人間じゃないだろ!」

なんと自己主張の強い杖だろうか。


「で、オーシリアから見てあいつはどうだ?」

2人で逃げながら骸骨を指さす。

「そうじゃな…。速さ自体はそうでもないのは見ての通りじゃが、攻撃力はゾンビやゴーストの比ではないじゃろうな。主は1発でもくらったら終わりじゃな」

うん、だろうね。

「ただ、1回1回の攻撃の隙も大きいようじゃからこちらから攻撃を入れること自体は難しくはないじゃろう。ヒット&アウェイで様子を見るしかないじゃろうな」

「俺も同意見だ」

こいつとは戦術的な話のすり合わせができるかもしれないな。


基本方針が決まったところで俺にはどうしようもないことがある。

攻撃手段がない!

オーシリアが出てきたことによって常に小太刀を持っていられるようになり、多少は攻撃手段が生まれたものの、所詮は素人である。

俺の攻撃でどれだけダメージが入るのか。恐らく全く入らないのに近いのではないだろうか。

はぁー。憂鬱である。

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