報告はこまめにしましょう

ボスである骸骨の攻略にかかってから体感早1時間半。

全くもって倒せる気がしない。

いやー、本当の戦いってしんどいな。

ゲームなら本人の体力は考慮しないにしてもこっちの攻撃で入ってるダメージ量は把握できることが多い。

相手のHPがわからないからいつ倒せるかの目安にはならないが、それでも削れている実感があるからモチベーションにはなるだろう。


しかし、戦ってる本人はそんなの見えるわけもないし、もう足が動かなくなってきている。


「どうしたのじゃ、主? この程度で音をあげるとはなさけないぞ!」

「体力が無尽蔵なやつと比べないでいただけますか!? ってかまずお前は体力とかいう概念あるわけ?」

「む? ないぞ!」

「そりゃ大丈夫だろうな!」


なんと横暴な。



「で、お前の眼から見てどうだ? 俺もう限界が近いんだが」


むしろここまでもったのを褒めてほしい。


「うむ、わしとしてはかなり削れてきてるのではないかと思うぞ。なにしろこれだけの時間がたっている。最初に入れた弱体化の魔法もかなり効いておるじゃろう」


……ん?



「何の話だ?」

「む? 言っておらんかったか? お主が偵察から一気にやってしまおうかと方針を変えた時にならばと思って弱体化の魔法を撃っておいたのじゃ。あれは時間がたてばたつほど効くやつじゃからのぅ」

「聞いてないんだが?」

「では、今言った」



「痛い痛い! やめろ、やめるのじゃ!」


腹を立てた俺はオーシリアの耳を引っ張りながら逃亡を続ける。


「で、他に隠していることは?」

「な、なにもないのじゃ! だから離すのじゃ!」

「いやー、でも隠し事してたのは事実ですし?」

「主も聞かなかったじゃろうが!」

「普通聞かねーよそんなこと」



俺の手を逃れたオーシリアは恨みがまし気にこちらを見る。


「で、いつからそれは使えたんだ?」


ダンジョンに入る前には使えなかったぞそんなの。


「……この姿になってからじゃ。いつの間にかできるようになっていての。折角じゃからと使っておいたのじゃ」



結果的には正解なものの持ち主の意見を聞かずに勝手に魔法を撃つ杖。ありえん。


「今後、俺の身を守る以外での勝手な魔法の使用は禁じる。あと、新しい魔法とか使えるようになったらすぐ言うように」

「わ、わかったのじゃ。わかったからその手をやめい」


いつでも耳を引っ張れるように手をわきわきさせてた俺を見てすぐに頷くオーシリア。

自分の使える魔法とかいちいちチェックしたりしないからな。家に帰ったらするようにはしていたが、この

頃家に帰ってないし。



「で、その魔法はどういう効果だ?」

「えっとじゃな。魔法名はアグ・ラグ。効果発動から24時間で相手の全パラメータを最大時の3割まで徐々に下げる。その後、また24時間かけて徐々に戻るらしいのぅ」


かなり強くね? 放っておけば放っておくほどいいってことか?


「この部屋から出たらリセットされるか?」

「されるじゃろうな。一度退却したと判断されるじゃろう」


ってことはいかにこの部屋で生き残るかが大事なわけか……。

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