ドアのデザインは大事だよね
階段前の水場で顔を洗いながらこの階に来た時も思ったことを改めて思う。
「…なんで階を降りた先に水場を作らなかったんだろうな?」
その方が絶対冒険者的には楽だよな?いちいち戻らなくていいんだし。
そこまで考えたところで一つの疑問点が解ける。
「あ、ここの水場とか作ってるのヘスティアさんだわ」
なぜかというと、俺が仮にこのダンジョンの主なら水場なんて絶対に作らないからである。
だってそうだろ?なんで侵略してくるやつの回復ポイント作らなきゃなんないんだよ。例え自分が必要だとしても自室っていうかボス部屋の近くに一つあれば十分だろ。敵を呼び込む意味がわからん。
ということでこういう水場とか道端の食料とかはボスからすればまじで作るはずがない。そうなるとこのダンジョンも管理していると思われるヘスティアさんからの救済措置だということになる。
道端の食料ってめちゃくちゃ汚そうだな。自分で言っておいて思ったわ。
ふと思って自分の臭いを嗅いでみる。
「…もうわからん」
地下でゾンビとかと隣り合わせで生きてきた今となっては鼻がぶっ壊れててにおいをほとんど感じなくなっている。
「絶対帰ったら最初に風呂に入る」
そう決意して俺は地下3階への一歩を踏み出した。
「またこれかよ!?もうよくね!?」
ところがまたもや階段がくそほど長い。200段までは数えていたのだが、これ以上数えていても萎えるだけだと判断して打ち切った。
体感では地下1階と2階の間よりも長く感じる。
「いや、そりゃな!?ボス部屋の前は辿り着きにくくするもんだよ!?でもこういうことじゃないだろぉ!!」
もう文句がとまらない。
「そもそも俺なんでここにいるんだよ!?レイン奪還のための特訓って言ってもエネミー相手ならレベルの一つも上がってくれなきゃ意味なくないか!?ゾンビ退治とねずみ退治だけ上手くなっても絶対に役に立たない自信があるんだけどなぁ!!」
そして文句というのは一つ出て来れば、それはもう洪水のように出てくるものである。
「これで『精神的に強くなったでしょ?』とかほざきやがったら絶対に一発はあのハンサム顔をぶんなぐってやる…」
怨念と共に歩くこと更に数十分。
「着いた…」
地下3階に到着も満身創痍。
「あの向こうに見えてるドアの先がボス部屋かな…?」
奥の方を見やって今まで一度もなかったドアが存在することを確認し、今一度天を仰ぐ。
「ヘスティアさんも何考えてこんな構造にしてるんだか…」
ヘスティアさんの鉄壁の笑顔を思い出しながらぼやく。
「これ見てるとしたら絶対面白がってるんだろうな…」
確信まである。「ふふふ、頑張ってくださいねー」とか言ってるんだろうな…。
「よし!とりあえずボスさんを覗きに行ってみますか!」
とりあえず今日は頑張ったし、部屋にも入らずにその姿だけでも見られればいいやという気持ちで最後のやる気を振り絞る。
「いや、ドアァァァ!!もっと、こう…、デザインあっただろぉぉぉ!!」
なんでよりによって引き戸!?こういうのは普通は開き戸で押すか引くかだろ!?
「もう、いいや、今日は…」
ツッコミの大声でやる気を使い果たした俺は今日の行動を終えることを決心するのだった。
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