肩は壊しやすいですよね

「さて、気を取り直して行くとしますか」

地下3階はボス部屋しかない構造のようで、周りのことを気にせずにゆっくりと休めた。

「こんにちはー」

ガララッ。

折角の引き戸なので勢いよく開けてみる。

スライド滑らかだな。こまめに油でもさしてるのか?


「いないな…」

いや、いないわけがない。目を凝らせ。

「あれか…」

奥の方に玉座のようなものが見える。そこには明らかーに偉い服装をした骸骨が座っている。

服はボロボロだけども。


「こういう時に遠距離がないってのはしんどいな…」

俺は昔から「あれ明らかになんかの仕掛けだな」ってオブジェクトには遠くから一発入れてみてその反応を見るようにしていた。ゲームのデスペナルティも嫌だったし、それがなくともデス数が増えるのを好まなかったためだ。


「かと言って奥に入るのも怖いしな…」

まあ要するにビビりなのだ。

絶対にゲーム実況なんてやってはいけないタイプの人間である。

例えば、バイ〇ハザードなんてしようものなら疑心暗鬼になってマップの隅から隅まで探索しつくし、飛び出てくると思われる場所に照準合わせて出てきた瞬間に排除。絶叫とかそういう次元じゃない。

チキリプレイとか言われて叩かれるんだろうなぁ…。やべ、謎の妄想により悲しくなってきた。


俺が意味の分からんコントを一人でやってる間にも骸骨が動き出すような気配はないし、他のエネミーがポップするような様子も見受けられない。

どうせポップしてても気づけないんだろうけどな。見えてるの松明の火の関係で本当に周りだけだし。

骸骨は白くボヤっと光っているので「あれがボスなんだろうなー」って感じだけれども、そこらへんにモブが発生してても見えんだろうな。


よーし、ここは物を投げるのなんて身体測定のハンドボール投げぶりという驚異のブランク持ちのこの肩にかけるしかないな?

しかも、その頼みの綱の身体測定もいつからやってないのかあやふやだな。中学1年はやった気がするけどなぁ。中2はどうだったっけ?既に自宅警備員ニートとして活動していたか、社会の荒波に逆らおうと頑張っていたかのどちらかだろうな。


柔軟体操をしながらその頃を思い出す。ストレッチ大事。普段から投げてる人が壊すんだからな。俺が壊さないわけがない。

謎の自信で柔軟をしていると、思い出した。

俺既に自宅警備員やってたわ。ということはこれは4年越しくらいの投擲となるわけだ。

かっこよく言っているが実際はその辺に落ちてる石を投げるだけである。


「おらいけぇ!!」

勢い良く投げるが、全く届かず石は地面を転がる。かなり遠いな。

おっと、肩が…!?ビキッていったよ!?ビキッて!やばいなこれは。


「最初は自然のものが良かったんだけど…」

ヘイト集めにくいと踏んでいたのだが、これに関しては諦めるしかないだろう。肩がお釈迦になるよりはいい。

「チェーン・バインド」

骸骨を縛るようにバインドを4重にかける。これですぐには反撃がこないだろう。



そう思っていたのだが、骸骨の様子を見るために目を凝らしていた俺は、周囲に出現したゴーストへの反応が遅れた。

「え?」

気付いた時には周りのゴーストはブレスを発射しており、反応もできなかった。

死んだわ、これ。


そう思って腕で頭を覆った俺は数秒後、普通に生きていることに気づく。

周りを見渡すと、どうやらステッド・ファストが発動しているようだ。

「ど、どういうことだ!?」

立ち上がって周りの壁に手を当てる。

「しかも動けてる…」

一体何が起こっているんだ?


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