第47話
彰夫は新横浜からのぞみに飛び乗ると、京都で乗り継ぎ奈良へ向かう。
彰夫は改めて好美が姿を消した理由を考えてみた。
卒業まであと少しだと言うのに、単位も残したまま、好美はいったい何処へいってしまったのだろうか。
姿を消した晩の経緯から考えると、好美が自らの意思で出て行ったとは思えない。交代人格のテルミが消されることを嫌って連れ去ったとしか思えないだ。
基本人格を抹殺することは、交代人格の消滅も意味するのだから、まさか極端な行動には出ないだろうと自らを安心させ、冷静になろうと努めた。
江ノ島ハウジングにある借主データから、好美の実家の電話番号と住所を調べた。
まず実家に連絡取ろうと試みたが、掛けてみるとこの番号は使用されていないとのアナウンスが流れた。家族のものと偽って、美術大学の学生課にも電話してみたが、学生の出欠状況は把握していないと門前払いだ。
どうも好美からは、休学届や退学届が出ている様子はなかった。
部屋でひとりぼっちの日が重なるにつれ、彰夫の心配も日に日に膨らんでくる。
2週間も経つと、もうじっと待ってはいられなかった。まず彼女の実家に行ってみよう。好美はそこに居るのかもしれない。よしんば居なかったとしても、家族の話から彼女を探すヒントが得られるかもしれない。
信子に一方的に休みを告げて、彰夫は奈良に向っているのだ。
「あれ、及川君じゃないか?」
JRのみやこ路快速の車中で、彰夫は意外な人物から声をかけられた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます