第30話

 テルミが自分の寝室に入ってしまえば、彰夫もリビングに居ても仕方がない。


 ベッドに横になり睡眠を取ろうと試みたが、いろいろな考えが頭を巡った。

 今日の対話は失敗だった。次回にテルミが現れるまで対話はお預けだ。今日はまったく知らないとシラを切られてしまったが、そんなはずがあるわけ無い。テルミ相手にどう対話を誘導したら、拒否されずに、求める答えが引き出せるのか…。

 やはり、苦手な酒を飲み交わしながら話すしかないのか。そんなこと考えているうちに、ますます頭が冴えて、なかなか寝付けなくなっていた。

 ふと、ドアをたたくかすかな音に気づいた。


「はい?」

「彰夫さん、まだ起きてますか」


 声のトーンが、好美だった。


「ええ、どうしました?」


 彰夫がドアを開けた。好美が、パジャマ姿で立っていた。


「自分の部屋に…誰か居るみたいな物音がして…で目が覚めてしまって…そしたら、なんか怖くなって…」


 怒ったテルミが好美に、また何か悪さをしたのだろうか。好美がまた小鳥のように震えていた。


「温かいココアでも作りましょうか?」

「いえ…ただ怖くて…」


 好美が消え入りそうな声で言葉を続けた。


「彰夫さんのベッドで…一緒に寝てもいいですか?」

「一緒って…」


 戸惑う彰夫に、好美が顔を赤くした。しかし、顔を赤らめながらも、肩の震えが止まらない。よっぽど怖い思いをしたのだろう。


「ごめんなさい。変なことお願いして…。やっぱり…」

「それで好美さんが安心できるなら、僕はかまいませんよ」


 彰夫は、絶対に手を出さないぞという固い決意を持って、自分のベッドに好美を迎え入れた。しかし、迎え入れた瞬間に後悔する。

 当然なのかもしれないが、好美はパジャマの下に何もつけていない。そんな彼女を直接肌で感じると、その暖かさと柔らかさに溺れそうになった。好美が発する香りとオーラで理性を失いそうになった。

 ベッドに入ってきた好美は、彰夫の腕の中で小さく震えていた。やがて、好美が彰夫にしがみつく力を強めると、ゆっくりと彰夫の唇を求めてきた。

 好美の濡れた唇が触れた瞬間、彰夫は押さえていた理性の堰がついに壊れ、好美を強く抱きしめた。好美は長年待っていた恋人にやっと出会えたかのように彰夫を受入れ、そしてふたりは激しく燃えた。

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