シャインレンジャーのグリーン、恒輝は自分のミスによって兄であるレッドを負傷させてしまう。
その後任となったのは組織の秘蔵っ子、しかも女の子だった。
クセあり難ありのヒーローたちはそれぞれに事情を抱えていて、それがゆえに共感が持てる作品です。
王道であり、戦隊特撮ものとしては押さえてほしい点はしっかりと描写しておきつつ、それとは対照的に地道なトレーニングや恋愛模様やお疲れ様飲み会など、テレビではカットされたり語られなかったりする部分にもクローズアップするあたりも、小説ならではといったところでしょう。
悪の組織との戦闘だけでなく、ヒーローたちの中でどんどん変化していく人間関係、恋愛模様などにも、今後目が離せなくなった良作です。
悪の組織から人々を守る正義の戦隊の戦いがここにある!
……などと力を込めて始めましたが、作品は力を抜いて気楽に読める内容です。
作者さんが意識して柔らかく描いているのではないかと、最新話(三章末)まで読んだ私は感じました。
緊迫感あってもおかしくない戦闘シーンですら柔らかい雰囲気を感じる。
仲間達の衝突の場面も同じく柔らかい。
もちろん、内容は緊迫感ある場面なのです。
でも柔らかい感想を持ってしまう。
他にもある。
レズビアン、ヘテロ、アセクシャルと、様々な性癖を持つキャラが出てくる。
昨今、LGBTQの話題は社会問題の一つとしてあげられる。ニュースでも関連した話題をしばしば見かける。
そして、この作品では敵を倒す際の鍵にすらなっている。
つまり重要なポイントなのです。
もっと深刻であったり、理不尽な空気を感じる内容でもおかしくない。
しかし、自然に、さらっと差し込まれている。そのうえ作者さんの柔らかい描写のおかげで、まったくと言って良いほど暗さに繋がるところがない。
こんな風に、様々な性癖の方が社会に溶け込んでいられたらいいなと感じました。
戦隊ものにはお約束の仲間との絆や恋愛話、そしてレンジャー達の密かな秘密。
まんべんなく織り込んだ作者さんの技量にも感心させられました。
まだ、作品内には秘密があり、それは明かされていない。
今後どのような展開になり結末を迎えるのか、肩肘はらずに楽しめそうです