Epilogue
英雄の祝典
それから本当に色々あった。
情報部の働きによりリデムらは遂に情報を吐いた。悪の組織のメンバーはみな捕らえられ、組織は崩壊して跡形もなくなった。
様々な不正が告発されて、沢山の裁判が開かれた。
代わって、弱い怪物のようなものが出没するようになってきたが、これは何の問題もなく討伐できる。
色々、色々。社会の様相は忙しなく移り変わってゆく。
そして、
トランペットのファンファーレが高らかに鳴り響いた。開幕である。青空のもと、楽隊の演奏が始まった。
やがて舞台の真ん中で、色んなお偉方が次々現れては、何やら喋り始める。
何事にも真面目な恒輝だが、自分でも意外なことに、こういった公式の場での長ったらしい話は苦手だった。
意味のある努力ならいくらでもするが、こういう演説はとても無意味で効率が悪いように感じるのだ。
星奈は言わずもがなで、退屈さが微かに顔に出ている。拓三はぽけーと空想の世界に飛んでいってしまっている。千陽はまだ疲労が残っているのか眠たげで、訓練時代の癖だけで何とか踏ん張っているようだった。
何かこう、示しがつかないというか……まあ、軍隊ではないのだから規律はさほど厳しくないのだが……。
「今後ともシャインレンジャーは皆様の安全と平和を守るべく──」
うんたらかんたら。話が頭に入ってこない。客席の方もざわざわしていて、あまり注目度は高くない。
恒輝は、こそっと千陽に話しかけた。
「あんなことを言っているが、実際シャインレンジャーはどう変わっていくんだろうな」
「ふぇ」
千陽は眠たそうな目をこちらに向けてきた。
「どう変わるか……?」
「おれたちは今こんな所に偉そうに座っているが……これからは、どうなるのだろうな、と」
その時、ぱらぱらと拍手が巻き起こった。直近の演説者が話を終えたらしい。
司会者が千陽の名を呼ぶ。
千陽は、席を立って、恒輝を振り返った。
背後から風が吹いて、彼女の黒髪を揺らした。
「シャインレンジャーは形を変えるけど……やっぱり、やることは一緒だよ。守るべきものがある限り、守るだけ。それに──」
その瞳は相変わらず澄んでいて、やっぱり素敵だなと恒輝は思った。
素敵で、強くて、逞しくて──尊敬できる仲間だ。
「──わたしたちの絆は、変わったりしないから、大丈夫」
そして千陽は前を巻き、代表として挨拶するために、粛々とマイクの前に歩いて行く。
真打ちの登場に、観客の視線が一気に集まった。
しかし千陽は臆さず、風の向く方へと進む。
そこにはかつての、小動物のような気弱な女子はいなかった。
朝日に照らされ、背筋を伸ばした、一流の戦士の姿があった。
恒輝は眩しさに目を細めて、その背中を見送った。
────おわり
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