花を摘み取る者
岡上 山羊
第1話
7月半ばをちょっと過ぎた蒸し暑い日だった。午前10時頃に入電があり、杉野中央署の刑事、香川 信之は二級河川の杉野川が流れる土手の草むらに立っていた。今朝早くまで降っていた雨のせいもあり、雑草には
「お疲れ様です。
「あぁ、遅かったな。
「国分市って、ここから10km以上はありますよ。また何でそんな所から」香川は汗が滲んだ額を拭く為に、ズボンのポケットからしわくちゃになったハンカチを取り出した。
「まぁ、鑑識結果を待って証拠品やら死亡推定時刻を元に聴き込みだな。お前だって栗さんから叩き込まれただろ?刑事は足だって」森本は香川の
「そりゃそうです。情報は足で稼ぐ!ちゃんと覚悟は出来てますって」そう言うと、香川は鑑識の元に近付いた。
「どうです?何か出そうですか?」香川の問いに鑑識員は目も向けて来ずに「さぁね。早朝までの雨だろ?犯行時刻にもよるけど、雨が降る前の犯行だったら証拠も流されてる可能性もあるしね。今の所、分かってるのは鋭利な刃物か何かで心臓を一突きにって事ぐらいだよ」
確かに雨と言うのは厄介だ。犯行現場が土手と言う事もあり、犯人の
その時、森本の携帯電話に着信があった。
「もしもし、あぁ、現場だ。うん、えっ?もう一度言ってくれ。あぁ、本当か、それ!分かった、直ぐに署に戻る」
森本の会話を横で聞いていた香川は、
「森さん、どうかしたんですか?」香川の問いに森本は神妙な
「犯人が自首をして来たらしい。自首して来たのは、栗さんだそうだ」森本の言葉に香川は耳を疑った。自首した犯人は、元の香川の相棒であり、師匠とも呼べる存在でもある栗林 源一郎だったのだから。
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