第11話 カルナの事情
―拠点にしている掘っ立て小屋―
前回のクエストでは大手柄だった。しばらく遊んで暮らせるだけの資金を手に入れた俺達は、その日は昼まで寝て過ごしていた。
俺は目を覚まして辺りを見回す。ボーっとした頭で思い出そうとするが、昨晩は夜遅くまで飲んでいた記憶しか残っていない。エルルもチムチムもカルナもまだベッドで寝ている。
「ここも手狭になったもんだなぁ」
と、俺はそんな事を言いながら、ベッド脇のナイトテーブルの水差しから水を注ぎ、ぐいっと飲み干した。
バウエルが目を覚ました。
「よぉ、バウエル。たまには普通の散歩でもするか」
普段はクエストが散歩コースだ。それでもクエストに出掛けるときは連れて行けと吼えてうるさい。
リードに手をかけたら尻尾を振って駆け寄ってきた。
「『動物会話』も早く覚えたいよなぁ」
だが、付近で動物会話を身につけているものは居なかった。山中の狩人などが所有している事が大半で、街中に住む狩人たちにはあまり一般的ではないらしい。
―ザーラムの小道―
名も無い小道。
既に時刻は昼であるのでそれなりに人通りはあるが、それでも大通りほど人は居ない。
「ハッハッハッハッハッ」とバウエルが息をしながらリードの先で歩いている。
リードを引く俺は目的地を決めてはいない。今日も休みだ。どこで過ごそうが自由である為、気ままにぶらぶら歩いている。
「なんか腹減ったなぁ」
近場のパン屋で売り出されていた肉を挟んだバターロールを二、三個買う。バウエルにも一個あげた。
通りのベンチでパンを貪る。ついでに買ったお茶でのどを潤す。
「おー。何て平和なんだ。毎日こうならいいのにな」
通りを行き交う人を見ながらそんな事を思う。
と、その中に見覚えのある顔が歩いていた。カルナだった。
「ん、あそこにいるのは・・・おーい!」
俺はカルナに声をかけた。相手も気がついたようだ。
カルナが歩いてきた。
「誰かと思えばシシトウ殿か。バウエルと散歩かな?」
「あぁ、そうだ。いつもみたくクエストへ散歩に連れて行ってばかりじゃ可哀想だからな」
「たしかに過酷な散歩道になるな。シシトウ殿もたまには休まれたらよかろう。聞けばしばらくはクエスト続きだったらしいではないか」
「あぁ、馬車を買って所持金に余裕がなくなったんだが、この間のクエストのおかげで今じゃ、以前より所持金が増えたよ。偶然とはいえ、魔神に出くわしたおかげだな!」
カルナは俺の言葉を聞いて、何か思うところがあったようだ。
「ふむ。シシトウ殿は魔神と遭遇したのは偶々だと思うのか。・・・あれも私が居たせいでそうなったのかもしれないが・・・」
俺はあの時のことを思い出す。壁が消えたのもどちらかと言えば自分のせいかもしれない。
「あれは偶然道が開いたからそうなっただけさ!」
未だにあの黒いオーラの事はわからないのでごまかした。
「そう思ってくれたら気が楽で助かる。・・・私は生まれてこの方トラブルに遭遇する性質のようで、あれさえもがそのせいではないかと言う気がしてならないのだ」
「それは流石に考えすぎだろうよ!」
カルナがしばし考え込んだ。
「ふーむ。それなら今日一日、シシトウ殿は私と行動を共にするか? もしかしたらそれでわかる事もあるかも知れぬぞ?」
「へぇ、そんなに変わるものなのかな。大体この間のクエストは特に変わったことは無かったように思えたが・・・」
と言いかけた所で、この間に変わったことが起きたのは自分だった事を思い出した。
「無くはないが、あれは俺のほうもいろいろあったから・・・」
「色々と言えば色々だが、私には大分変わった事があったように思えたが」
魔神を討伐した日は皆無事で何事も無く終わりはしたが、俺自身を含めて何事もありすぎた一日だった。俺とカルナが揃うと何かが起きるとかそういう話なんだろうか。
「なに、私といればいずれはわかるさ。周りの者達にも少なからず影響を及ぼすからな」
そういう彼女の横顔はどこか悲しそうだった。きっとそれで身近な人達と離れて暮らす必要性などがあったのだろうか。
「そこまで言うなら、ためしに一日一緒に居ようじゃねーの! 冒険者稼業、トラブル上等だぜ!」
何かあるから必要とされる商売。なら、カルナの悪運はあるいは仕事の助けになるかもしれない。
「では、何もしないでぶらぶらするのもなんだ、何か請け負えるクエストが無いか探してみよう」
カルナの言葉に俺は頷いた。
「あ、バウエル。今日はお留守番な! 毎回クエストが散歩コースも過酷過ぎるだろう」
バウエルはどこか悲しそうな表情で「クーン・・・」と鳴いた。
―冒険者ギルド ゼカイア―
昼過ぎの冒険者ギルド。朝の苦手な冒険者を除いて、みなクエストに出立した後だった。
俺とカルナはクエストボードを眺めて廻る。
「やはりこんな時間じゃあ、ろくなクエストは残っていないなぁ」
ある程度予想はしていたが、大半のクエストは既に受諾した冒険者が決まった後だった。
「ならフリークエストを受けよう」
カルナが一枚のクエスト用紙を手に取る。それは一定期間内に特定モンスターを倒せばよいという街の治安維持組合が定期的に出すクエストだった。
受諾する必要は無く、討伐した証明が出来ればよいだけの誰でも参加できるクエストの為、フリークエストと呼ばれていた。
「オッケー! 直ぐ近くなら楽でいいんだけど」
カルナが手にしたクエスト用紙を覗き込む。地図で見ると、街の直ぐ北西の荒れた岩山だった。
「日帰りで行ってこれる場所のようだ。低い山だから危険はそれほど無いだろう」
カルナの提案に俺は乗った。
「エルルとチムチムはどうする? 一応今日は休みの日の予定だが」
「無理に連れて行く必要もあるまい。近場で危険度は低めのクエストだ。我々だけでも対処可能なはず」
以前も俺はエルルとザーラムの近くの森へ2人で採集クエストに行った事がある。難易度はそのときとほぼ同じだった。だからそれほど苦労はしないだろうと考えていた。
カルナの不運という特徴が無ければ、そうだったかもしれない。
Quest Set! 「岩の魔物を退治せよ!」
Target Monster「ローリングロック」Get Ready? ………Go!
―ザーラム北西の荒れた山―
そこはザーラムの鉱山のある山から少し先の山だった。鉱山の山と途中で重なる部分もある。近場と言えば近場だが、まだまだ自然が多く手付かずの地域のようで、開拓に先立って荒れ山の魔物討伐を推奨されていた。
今回のクエストもその一環だった。
「ところで、討伐対象の魔物はどんな魔物なんだ?」
なだらかな山を登りながら、俺はカルナに尋ねた。
「山の上部から転がり落ちてくる岩の魔物だ。ローリングロックと呼ばれていて、最初に転がって来た時に避ければ楽勝の初心者向けの魔物だ」
それはつまり、山の頂側に警戒していれば良いと言う事らしい。俺は狩人の固有スキルの『観察眼』があるので、少なくとも奇襲を受ける可能性は少ない。
「なら、俺は索敵役をやろう。固有スキルの出番だぜ!」
矢よりは斧や槌のほうが有効そうな気がする。鉱夫の道具のつるはしがあれば、特効可能な武器だったかもしれない。
「ふむ、シシトウ殿は武器を新調したのか?」
カルナが俺の背中にあるボウガンに目を留めた。この間の報奨金を使って購入した街の武器屋で一番値打ちモノのボウガンだった。
威力はきわめて高く、連射性も高い。そして木の矢ではなく鉄の矢を購入した。
「俺の攻撃力もかなり上がったんだ。これならキラーグリズリーも倒せそうだな」
ボウガンは通常の弓より威力が高く、射撃精度も高く、射程も長い。いい事尽くめの武器だった。現実では西洋の戦争でボウガンが登場したとき、あまりに威力の高い武器であった為、使用が禁止されたという逸話もあった。
「では、どちらがより多くの魔物を倒せるか、競争しよう!」
カルナが狩り競争の提案をしてきた。なるほど、それなら励みにもなる。
「いいだろう。上等だ。乗ってやる!」
射程が長い分はこちらのが有利だ。と、そう判断した。勝機はある。
2人で意気揚々と山を登る。貴族は狩りを嗜むようで、それなりの家の出自となるカルナも楽しそうだ。
巨石などが転がる荒地のなだらかな山だ。木々はまばらで見通しは良い。このまま行けば順調に山を踏破可能だろう。
だが、しばらくしたら天候が荒れ始めた。
「おっと、雨でも降ってきそうだな。街にいたときは晴れ空だったのによ」
山の天気は変わりやすいと言うが、高山ほどではないので問題はないだろうと考えていた。だが、あっという間に黒い雨雲が空を覆いつくす。
「ふむ、これでは一雨来そうだな。少し急ぐか、どこかで様子を見るか・・・」
と、カルナが言いかけたときバラバラバラッと何かが降って来た。
「岩の魔物か!? ・・・いや違う、雹だ!」
握りこぶしくらいの氷の塊が振ってきた。近場に岩に当たって氷が砕ける。
「シシトウ殿、頭部を守れ! 一旦避難しよう!」
カルナが篭手で自らの頭部を守りながら駆け寄ってきた。俺もそれに習って頭部を腕でガードする。篭手などは無いが、頭部へ雹が直撃するよりはましだろう。
と、今度はゴロゴロゴロ! という音が聞こえてきた。
「なんだぁ? 今度は雷か?」
俺はそう言いながら空を見上げるが、特に雷光などは見えない。と、山の斜面側を見たら、ごろごろと大きな岩が転がってきていた。
「うわっ! 今度こそ魔物の方か!?」
俺の声にカルナが慌てて身構える。
「シシトウ殿は私の後ろに!」
俺は慌ててカルナの後ろに廻る。山における落石事故の際は隊列を斜面から谷側へと一列に並ぶと良いらしい。
「私が合図を出す。そちらのほうに避けてくれ!」
「わかった!」
カルナが転がってくる岩を見切って、「右だ!」「左っ!」と指示をくれるので、カルナの声と動きに合わせて俺も反復横飛びのように動いた。
ゴロゴロゴロ! と大きな音と共にそれまで自分達が居た場所を岩がいくつも転がっていく。
「危なかったなぁ!」
俺は谷の方面へとごろごろと転がっていく岩を見ながら安堵した。と、がこっと近場で動きが止まった岩がある。
「貰った!」
カルナがそういうと、近くで動きが止まった岩に剣を叩き込む。
ばこっ! と言う音と共に岩が真っ二つに割れた。良く見ると、岩には目と口があり、まるで生き物のようだった。
「あっ、しまった!」
「一体目は私が頂きだな!」
転がってきた岩は間違いなく標的のローリングロックだったようだ。カルナに先制を許した。
「急な天候不順に気を取られてしまった。まったく、ついてないな」
「この手の不運は日常茶飯事さ」
と、カルナの合図で右に左に避けながら、転がり行く魔物を視界の端で追う。
少し降った所で本物の岩に激突して動きが止まった魔物を見つける。
「ん、よし。そこだっ!」
俺はすかさず狙いを定めて岩を撃った。
ズガッ! と言う音と共に矢が岩の魔物に突き立ち、あっという間にローリングロックは割れて砕けた。
「なんだ。始めの攻撃さえしのげば雑魚だな」
そう言ってカルナのほうを振り向いたら、カルナは二体目のローリングロックを叩き割っていたところだった。
「駆け出しの冒険者の特訓に良く使われる魔物だと聞く」
と言いながら、カルナは三体目のローリングロックに剣を叩き込んでいた。俺も近くで動きを止めた岩を探しながらボウガンで撃ち抜いていく。
「二体目・・・良し、当たりっ! 三体目・・・あれ、本物の岩だった」
ローリングロックが転がってくる際に、本物の岩に当たって落石となるケースもあるようだ。どうやら俺は魔物と間違えて本物の岩を撃ち抜いたようだった。
と、調子よく次々と魔物退治を始めたところ、ぱらぱらと雨が降って来た。それは間もなく土砂降りの雨となる。
「うわぁ、これはきつい。なぁ、カルナ。どこかで雨宿りしないか?」
「賛成だ。この天気なら直ぐにまた晴れるかもしれない。そうしよう」
転がり落ちてくるローリングロックを避けながら、雨宿りできる場所を探した。
雨で視界が悪くなっている状態で、何とか雨宿りを出来そうな場所を探す。俺の視野に大きな岩石の下にくぼみが見えた。
軽く雨宿りできそうなスペースがある。そしてそこは巨石の影である為、ローリングロックも襲ってこれなそうだった。
カルナと共に俺は巨石の下に滑り込んだ。予想通り、岩の下までは雨は届かない。ローリングロックの攻撃も止んだ。
俺は濡れた服を絞り乾かそうとする。
「少し寒いな。お、そこに枯れ枝があるのか。焚き火をしよう」
巨石に下に乾燥した枯れ枝があった。わずかばかりではあるが焚き火の薪に出来そうだった。
俺は早速枝に火をつける。ぱちぱちと枯れた枝が焼けて爆ぜる音がする。
俺とカルナは焚き火で温まる。
「ちょうどよい休憩時間だな。雨が上がるまではじっとしていたほうが良さそうだ」
そう言うカルナは鎧を脱がずにそのまま焚き火で服を乾かした。
ゴウゴウと土砂降りの雨が山の斜面を打ちつける。斜面を見ると、雨水が集まって小さな小川のようになっていた。
「中々晴れそうに無いな」
「そのようだ・・・せっかくの機会だ。シシトウ殿には私の生い立ちの話を少しして置こう」
焚き火で温まりながら会話を始めた。
「私はこの国のとあるお方の下に生まれたが、訳あって表舞台には出る事は叶わなかった」
「やはりカルナはいいとこのお嬢様なんだ?」
「・・・その認識で間違いは無いが、生まれは万人に望まれたものでもなかったのでな。裕福ではあっても針の筵のような世界だった」
俺は父親に当たる人物を『とあるお方』と言ったカルナの物言いに、どこか距離があるように感じた。
「・・・そうなのか。それでいよいよ街から離れて暮らす事に」
それは俺達が始めに彼女の後見人から受けたクエストの話だった。
「その通り。私の後見人がザーラムで隠遁暮らしをする事を進めた。帝都に居たままではどうなるかもしれなかったからな。だから、私は本名を剥奪され、唯一あのお方より賜った剣のみを携えてザーラムへ行く事を許された。この先、私は真の名も剣の流派もこの剣の本当の名をひけらかす事も許されない」
それは随分と厳しい処遇のように思えた。
「カルナはそれで納得しているのか?」
「私はそれで行動の自由を許されるのならば安いものだと思っている。だからお前達にも感謝している。私のような素性のわからぬ者もそばに置いていてくれるのだから」
それは前衛職が居なかったパーティの事情も多々あったが、彼女の腕を見込んでのものでもある。そして事情を知っていたら知っていたで、エルルもチムチムも反対するとは思えなかった。
「みんなカルナを歓迎しているよ」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
カルナが小さくほほ笑んだ。笑うと可憐な女性と言った感じである。普段の鎧姿からは似ても似つかぬ雰囲気がした。・・・剣の流派も名乗れないと言った彼女は、おそらく相当な由緒ある剣術を学んだのだろうと考えた。そして、恐らくは父親と思わしき存在から貰ったであろう剣を携えて。・・・彼女は貴族の貴婦人のような格好ではなく、貰った剣にふさわしい女性になろうとしたゆえに白銀の鎧を纏うようになったのだろうかと、そう思えた。
だが、それゆえに上級職のソードマスターは選べなかったのだろう。なれるだけの実力はあるらしいが、流派を名乗る事ができない。だから控えめの下級職をあえて選んだのだろう。
「ん? あぁ、この剣か」
カルナが俺の視線に気が付いたようだ。
「その剣。きっと大事なものなんだろうな、と思ってさ」
俺の言葉に彼女が嬉しそうな表情を浮かべた。
「そうだとも! この剣こそが私の証明。唯一直接授かった賜物。この剣こそが我が誇り」
カルナは剣の柄を大事そうに撫でた。
「しかし、なんでまたそんな大事な話を黙っていたんだ?」
「訳あって名乗れないと言っただろう? いつどこで誰の聞き耳があるかわからなかった。この先も可能な限りは秘密にしていてくれ」
今日の話は俺とカルナの秘密の共有のようだった。エルルやチムチムに話したい気もしたが、彼女のクライアントからの話以上に守秘義務が必要そうな話だけに躊躇われた。
「私はそのような生まれなのだが、なぜかいつも不運に見舞われる身でな。色々と『自然の災い』などに遭遇しやすいのだ。天候もそうだが、魔物などの類とも良く遭遇する」
魔物の類と遭遇しやすいのならば、それは冒険者が天性の職業だと言えなくもなさそうだった。
「お目当ての魔物と出会いたい職業、冒険者へようこそ。ギルドのみんなも歓迎していたし、きっと天職だと思う事だろうよ」
「なら良いのだがな」
彼女は剣の腕も立つ。きっと良い冒険者になることだろう。出自の件はおおっぴらに出来そうに無いが。
「大丈夫、トラブルなんて自分から突っ込んでいくのが俺達冒険者さ!」
俺はいつも遭遇する厳つい冒険者達のように親指をぐっと立てて笑った。
「ありがとう」
カルナは小さく笑った。
外を見るといつの間にか雨は上がって晴れていたようだ。
「お、青空が広がり始めているぞ」
「この分ならもう少しローリングロック退治をして帰れそうだな。私は既に三体討伐したが、シシトウ殿は現在何体か?」
「俺はまだ二体だよ。そっか。競争は継続中か」
「当たり前だ。帰路に着くまでが狩りなのだからな」
家に着くまでが遠足です、見たいなことわざでもあるのだろうかと思った。
「よーし、俺も負けていられないな! この後の作戦はどうする?」
「先ほどと同じ戦法なら安全だ。まずは回避に専念し、近場にとまったやつを狙えばいい」
焚き火を消して外へ躍り出た。
濡れた斜面に気をつけるくらいで、晴れて見晴らしがよくなった状況では、ローリングロックを看破し避けるくらいは造作も無かった。
再びローリングロック退治に専念する。
がこっ、がこっ! とカルナが次々とローリングロックを砕いて廻る。
ズガッ、ズガッ! と俺も次々と転がってきた岩を撃ち抜いていく。・・・たまに本当の岩があるので射程の有利だけで勝負は決まらなかった。
一時間ほどローリングロック退治を続ける。
「俺はこれで二十三体目か。結構倒したなぁ」
つい今しがた打ち抜いたやつにも顔があるのを確認した上で、矢筒の残りの矢を確認した。残りの矢は僅かしかない。
「私はこれで十七体だ。上出来だろう。これくらいならな。どうやら私の負けのようだな」
この分だと矢が足らなくなって戦闘を継続するのは困難だろう。
「現時点なら俺の勝ちかな? だが、矢も無くなりそうなんだ」
「もうそろそろ切り上げる頃合いだ。時間無制限と言うわけには行かないから、私がおとなしく負けを認めよう」
なんだかんだで射程距離の差で勝てた。そしてカルナは潔く負けを認めた。長期戦ならどうなっていたかはわからない。
「今日は勝ちを譲ってもらった感じかなぁ」
「なぁに、次は私が勝つ。シシトウ殿、また付き合ってくれ!」
カルナはどこか楽しそうだった。ずっと胸のうちに溜め込んでいたことを話した事もあってか、晴れ晴れとしていてどこか気が楽そうだった。
「さぁ。シシトウ殿。今日はもう帰ろう」
そういうとカルナは先頭を歩き始めた。
俺はふと先ほどの会話を思い出した。
「なぁ、カルナ。何かあったときはみんなを頼ってくれ」
「どうしたんだ? 急に。・・・まぁ、前向きに検討してみる」
彼女の不運はきっと偶然くらいに思う程度のものだった。たいした問題ではないさ。それに彼女の出自の件も。
「きっと、みんなでカバーできるさ」
少し先を行くカルナには聴こえない程度に、俺は独り言を呟いた。
Quest Clear!! Result.
・ローリングロック討伐四十体分(2,000G獲得!!)
第12話へと続く
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