第5話 潮騒の喧騒
―冒険者ギルド ゼカイア―
ある日、クエスト探しに出掛けた日の事。俺達は自分らがクリア可能なクエストを探しにギルドへ立ち寄っていた。
ちょうどよい難易度は無いか探したが、後衛職+非戦闘員+犬でもこなせそうなクエストが見当たらなかった。
圧倒的な火力、攻撃力不足により、討伐クエストというだけで辞退しなければいけない有様だった。
「なぁ、エルル。ハイプリーストって、攻撃魔法とかないの?」
「他の宗教ならあることはあるけれど、私の宗教は
胸張って言われちゃったよ。
「攻撃魔法は無い代わりに、基本みんな回復や蘇生魔法などは得意としているよ?」
蘇生? 死んでも大丈夫って事か?
「あ、それってもしかしてすごいことなんじゃないのか?」
「そうそう、もっと私の宗教を讃えることね! 巷で冒険者の蘇生を行う神官職の大半はうちの宗教の者なんだから」
俺はふと大事なことを思い出した。
「あれ、エルルは古代の人だけど、現代でもその宗教はあるのか?」
俺の言葉に沈黙が訪れる。足元に居たバウエルが俺の言葉に呼応するように「ワン!」と吼えた。
「・・・え、・・・もしかしてないの?」
「一体どれくらい前かは知らないけれど、遺失してしまっていてもおかしくないんじゃないか? 既に廃れている可能性はあるだろうよ」
「ぇええええ! 当時は三大宗教といわれるくらいの大派閥の宗教だったんだよぉ?」
「街中で自分の宗教のシンボルとか聖印とかを見かけたことは?」
エルルがしばらく考え込んだ。
「・・・ない! 全く無い! あぁ、何て事なの!」
蘇生魔法の所持の判明と、その希少性が高いと言う事がわかったことはともかく、アタッカー不在のパーティであることは解決していない。
「蘇生魔法を所持している事を条件とするようなクエストは存在しないなぁ。どうする? 今日は引き上げるか?」
俺はクエストボードの張り紙を見ながら、自分らが行えそうなクエストが存在しないことを確認した。尚、採取系のクエストはあるが、道中で遭遇する魔物のことも考慮されて、どれもそれなりの難易度設定が見積もられている。
「そうね。無理にクエストを受諾して失敗するよりはそうしましょう」
俺達は冒険者ギルドを後にすることにした。
―ザーラムの海岸通り―
冒険者ギルドからの帰り道、いつもとは違う道を通って帰った。
「この世界にも帆船はあるんだなぁ」
俺は海沿いの船を見ながら語る。海に面した通り沿いに、港に停泊する大勢の船舶が見えた。
「海外からも巡礼にくる者は多く居たから。ここは元々入り江の町。港を作るには向いた地形みたい」
鉱山も近くに有るため、輸出関連も盛んそうだ。通称ギルドのクエストの中に、積荷の護衛がいくつもあったが、海を行くものは海賊関連が相手か何かなのだろう。
「すこし見て行ってもいいか? 帆船って、間近で見るのは初めてでさ」
俺はファンタジーな光景に慣れたつもりで居たが、やはり目新しいものを見つけると興奮する。ゲームでは中盤くらいに登場となる船。俺も船を所持できる日は来るのだろうか。
―ザーラムの港―
ザーラムは入り江の海岸沿いの入り口に位置する。内湾は波が穏やかである為、港とするには格好の場所だった。潮風の香りがする町並み。赤いレンガの建物の間を通って進むと、太陽光を反射してきらきら輝く海が見えた。
桟橋のあるあたりに、いくつもの大型船が停泊している。
「随分大きな船になったものね」
エルルがふとそんなことを呟いた。
船が大型化しているならば、航路が長くなり航海術も発達しているかもしれない。ならば、この世界の広さはそれなりにありそうだ。
と、俺達が船を眺めていたときのことだった。桟橋のほうから喧騒が聞こえた。
「なんだろう。揉め事かな。行ってみよう!」
エルルが興味深そうに喧騒の方角を眺めていた。俺も暇なこともあって賛成した。
喧騒の周りには人だかりが出来ていた。野次馬が集まっているようだった。
停泊場の桟橋の上で、大きな三角帽を被った褐色肌の魔法使いみたいな女の子が、ガラの悪い船員のような男達と揉めている。
「どうして、チムチムの杖がない。あれ、大事なもの。無くす、困る」
たどたどしく語る女の子は何かを探しているようだった。
「だから俺らじゃわからねえって言っているんだよ。何度言ったらわかるぅ?」
船員は皆どこか人相が悪く、それで居てニヤニヤと笑っていた。
「あの杖、この世に二つとない、ルビーを埋め込んだ、一品物。あれないと、チムチム、魔法使えない。困る」
魔法使いの女の子は一生懸命に何かを懇願している。
「オラオラ、お前らもとっとと帰った帰った。当船はこの港にて終着。折り返しのために、俺らは準備が忙しいんだ。邪魔していないでとっとと帰れ」
ガラの悪い船員達は、周囲の船客や野次馬達に散るように促す。
「チムチム、このまま帰る、だめ!」
魔法使いの女の子は船員に掴みかかろうとしたが、突き飛ばされて尻餅をついた。女の子は割と露出度の高い格好で、太ももの辺りのタトゥーがあらわになった。
周りの野次馬達は魔法使いの女の子に同情的な視線を向けながら、皆散り散りに去ってった。船員達も停泊中の船に戻って行った。
「なんだろう、あの人達。一人の女の子を乱暴に扱って!」
エルルが怒りながら魔法使いの女の子に駆け寄る。
「あ、あなた達、何者ですか? なぜあなた、古代語、話す?」
魔法使いの女の子が少し警戒していた。エルルの言葉は古代語と言う物のようだった。どうやらチムチムはエルルの言葉がわかるようだ。
「大丈夫。私はエルル、ただの通りすがりの大神官よ」
そういうと、エルルは擦りむいていた魔法使いの女の子の傷をあっという間に治した。エルルにはチムチムの言葉はわからないようだが、雰囲気で把握したようだ。それを受けて、チムチムは古代語でエルルと話すようになる。
「何か揉めていたようなんだけど、なにがあったんだ?」
俺は魔法使いの女の子に話を聞こうとした。が、先ほどの船から船員が一人顔を出し、まだ居たのかといわんばかりの表情をしたため、場所を変えることにした。
―ザーラムの港沿いの喫茶店―
温かなお茶を頂きながら、俺達は魔法使いの女の子の話を聞くことになった。
「私、チムチム。この国の遥か南、別の島から、来た。魔法使い、見習い。修行、するため」
「チムチムは先ほどの船と何の関わりが?」
エルルがチムチムに尋ねた。
「あの船、チムチム、船旅に使った。この街着いた時、降りようとした。荷物、杖が無かった。あれ、大事なもの。無くす、困る」
チムチムはお茶も口にせず、うつむいてしまった。
「ひどいこともあるものだな。エルル、ここは一つ彼女に協力しよう」
「シシトウもそう思う? わかった。何をするの?」
エルルは最初から乗り気だったようだ。
「先ほどの船員がにやにやしていたのが気になる。杖が宝石を埋め込んだ高級品であるらしいことも気にかかるんだよ。ここは一つ、深夜にあの船に乗り込んでみよう」
「あのガラの悪い船員達、何か隠しているわけね」
「かも知れないって話さ。あの船は明日に出港するらしいから、まだ今夜に忍び込める」
Quest Set! 「停泊船を捜査せよ!」 Get Ready? ………Go!
―夜のザーラムの港―
日中は船員達がせわしなく作業をしている為、俺達は深夜になるのを待った。
夜の停泊場。波の音がちゃぷちゃぷと聞こえるばかりで、人の気配などは無い。船員達は皆酒場へ出払って酒盛り中のようだ。当然見張りなどは置いていない。
「そろそろ良さそうだ。みんな、準備は良いか?」
俺はエルルとチムチムに尋ねる。バウエルも連れて来ていた。危険感知に優れ、警戒スキルを所持した人間以上の能力がある。
人気の居ない桟橋を渡る。
「よしよし、予想通り誰も居ないぞ!」
明日から出向となる船。となれば、当然船員達は今のうちに遊んでおこうと思うわけだ。予想通りだった。
俺達は人気の居ない船の中の捜索を始める。エルルには港側の見張りを頼んだ。
「船内は誰も居なさそうだが、もし仮に誰かと遭遇した場合、顔を見られる前に逃走するぞ」
俺はチムチムに作戦を伝える。
「わかった。それまでに、荷物、見つける」
今日を逃せばチャンスは無い。明日には彼らは出航してしまう。
「まずは客室を探そう。チムチム、案内してくれ」
「わかった」
チムチムはこの船で島から船旅してきた。ならば、まずは自分の客室に荷物を忘れてきた可能性を考慮した。
甲板から船室へ下りる入り口を見つけ出して降りていく。中は真っ暗の為、持ってきたカンテラ(500G)に火を灯す。通路に窓は無い為、外から明かりが見つかることもなさそうだった。
「場所は覚えているか?」
「309号室」
チムチムは短く答えて、先導して歩き始めた。
真っ暗で人の居ない船の中。しばらく歩くと、壁に309号室と書かれたプレートのある部屋の前に来る。
「ここ」
俺はチムチムに促し、彼女は船室を探し始める。探すこと数分。
「やっぱり、無い」
チムチムが残念そうにうなだれる。と、そのときであった。バウエルが「ワンワン!」と元気そうに吼えた。
「どうした? バウエル」
バウエルは、ダダダッと走り始めた。
「え、どこに行くんだよ、バウエル! まさか、ついて来いというのか?」
以前の薬草探しの時のこともあった。ここは一つバウエルを追いかけてみることにした。
バウエルの鳴き声を手がかりに後を追う。船倉を二つ下がった最下層。とある倉庫の扉の前にバウエルは居た。
「どうしたんだよ。こんなところで・・・」
「ここ、倉庫、みたい。チムチム、探す」
チムチムが扉を開けて入っていく。中は明かりが無いので、俺もカンテラを片手に後を追う。
中には沢山の積荷が置いてあった。輸出入品が置いてあるようだった。
「ありました」
チムチムがうれしそうに叫んでいる。
彼女の杖は雑貨品が積み込まれている場所に置いてあった。
「まさか、危うく売り飛ばされるところだったんじゃないだろうな」
話を聞く限りは高級品らしいので、ありえない話ではなかった。
「ありえる。この宝石、かなり値打ちある」
チムチムが紅玉のはめ込まれた杖の先端を指さす。そこには大粒のルビーがあり、カンテラの光に照らされて、赤く輝いていた。かなり目立つルビーの為、狙われるのも当然だった。
「しっかし、この船の連中は盗品まで売りさばこうとするのか。ろくなことしやがらないな」
俺は近くの積荷の箱に被せられていた布を開ける。と、その箱の中にあった葉っぱの束を見て、チムチムの表情が変った。
「それ、チムチム達の島、近くで取れる。煙、幻覚作用あり、ご禁制の品」
「ん? もしかして、なんだかかなりきな臭い船だったりする?」
「それ、売るも、所持するも、良くない」
「・・・この話をたれこめば、一矢報いられるかもしれないな」
俺の言葉にチムチムが頷いた。
「チムチム、この船の客、だった。チムチムが、その葉っぱ、持って、官憲に、持ち込む」
確かに俺が持っていっても、なぜそれがわかったのかと、追求されかねない。チムチムならこの船の客だった。船の中で偶然見つけた、で通りそうだった。
「よし、そうとわかれば!」
「官憲が、捜査、始めれば、強制捜査。証拠見つかる。終わり」
俺達は急いで船を後にした。
その後、官憲の詰め所を探すのを苦労したが、何とか見つかった。
チムチムがご禁制の葉っぱを持って官憲の元へと向かう。俺達も同行することにした。
官憲の方から事情を聞かれ、チムチムが船旅の途中で、あのご禁制の葉っぱを船内で偶然見つけたと語った。
葉っぱは本物だったので、直ぐに官憲が動くことになった。
俺達も捜査に任意で同行する形となる。
大勢の官憲を連れて、俺達は再び船の場所へと行くことになった。
問題の船にまた辿り着いたとき、船員の何人かが戻ってきていた。
「何だ、お前らは!」
「官憲である! 捜査特権により、この船の荷をあらためさせてもらう!」
官憲のリーダーが声高に叫んだ。
「そうはいくか!」
船員は慌ててカトラスを抜き放つ。ご禁制の品を密輸していることが発覚すれば、全員縛り首は確定だ。当然、慌てて出航して逃げるつもりなのだろう。仲間を呼び始めた。
官憲と船員達の間で戦いが始まる。船員も数が多い為、自然と俺達の護衛が居なくなる。
と、そこに船員達が現れた。
Battle Encounter! 「非合法活動を行う船の船員×3」
「お前らは官憲じゃねえな。そうか、お前らが通報者か。ただで帰れると思うなよ!」
3人の船員がカトラスを構える。俺とエルルには近接戦闘なんて無理だ。このままではまずい! と、その時であった。チムチムがすっ、と一歩俺達の前に出た。
「魔法使いの、命といえる、大事なもの。手を出した。その報い、受けるべし」
チムチムが杖を片手に振り上げる。
「何だ、てめえは?」
「私、チムチム。魔法使い、ぽそっ(見習い)。受けるがいい。この世の深遠より、来たりし、焔よ。我が敵を、焼き尽くせ」
彼女がそう詠唱すると、杖の先端に炎が現れる。
「ファイヤーアロー!」
彼女がそう叫び、杖を前へ突き出すと、炎の矢が飛び、一人の船員を撃ち抜いた。
「うぅわっちぃぃぃ!」
撃ち抜かれた船員は弾き飛ばされながら火達磨になって床を転げ回る。その光景を見て、他の二人の船員は逃げ出した。転げまわり消火しようとしていた船員はあっという間に官憲に捕縛された。
「助かったな・・・」
俺はそう漏らした。
Victory! Result なし
事件が収まるのは夜も明けるころ。遥か東方の海より日が昇り始めた時だった。
俺達は官憲に感謝され、後ほど表彰されるだろうと述べられて、所在を尋ねられた。冒険者の身分であった為、所属する冒険者ギルドの名を告げた。
そして、ようやく帰路に着いた。
Quest Clear!! Result.
・ご禁制の品の密輸業者を摘発の名声
・チムチムのルビーの杖
―冒険者ギルド ゼカイア―
早朝ではあるが、冒険者ギルドは開いている。元々酒場の役割もあり、酔っ払った冒険者が酔いつぶれている光景も見かけるが、冒険者達の朝は早い。良いクエストは朝方にあり、といわれているからだ。
「ふぅー、疲れた。少しここで休んでいこうぜ」
まだそれほど人は居ない。朝が早すぎただけだ。
「そうしましょ。チムチムもそれでいい?」
チムチムは俺達に同行していた。その日泊まる宿を確保していなかったのも有るようだ。
「同意」
ギルド内の長いテーブルに腰掛ける。俺達は朝食用のメニューを幾つか頼んだ。
「長い夜だったな。こっちに来てから生まれて初めての体験ばかりだったけど、今日のも今日ですごい体験だった」
俺は給仕さんが出した水の飲みながら一息ついた。
「良かったね。大事なものが見つかって」
エルルもバウエルに水をあげながら語る。バウエルは勢いよく水を飲んでいた。冒険者ギルドはよく魔法使いの使い魔として色々な動物を連れているので、バウエルも同じようなものと見られて、とがめられることは無かった。
「感謝」
チムチムはぽつりと感謝の言葉を述べた。大事な杖を前に持ちながら。明るい場所で見ると、なるほど大きなルビーがはめ込まれていた。盗まれそうになるのも頷ける。
「チムチムは冒険の途中でこの街に来たのか?」
俺はチムチムに尋ねた。
「チムチム、魔法使いの家の生まれ。今は修行中の身。まだ、どうするか決めてない。この街、着いてから、考えるつもりだった」
「そうだ、チムチムもこのギルドに登録したら?」
エルルが思いもがけない提案をした。
「チムチムをこのギルドにか? そうか、俺達の仲間になってもらえばいいんだ!」
「チムチム、ここのギルド、登録? あなた達、ここギルドの人?」
「そう、俺達はここのギルドの新米メンバーなんだ」
「チムチム、あなた達、仲間になって良い?」
「いいとも! エルル? 仲間になるってさ!」
エルルもうれしそうだ。
「俺達は新しい仲間を探していた!」
あんな魔法を使える人、こちらからお願いしたいくらいだった。
さっそくギルドへの登録手続きを進める。書類関連を追え、いつもの水晶球による冒険者診断を始めることとなった。
「お姉さん、朝も早いんですね」
俺は冒険者ギルドの受付嬢が、いつものお姉さんであることに気がついて挨拶をした。
「ええ、そういうあなた達は珍しく、朝早くから来ているのね」
そう言いながら、チムチムの水晶球診断が始まる。
「では、こちらの水晶球に手をかざしてください。これはあなたの能力を測る水晶球。あなたの成るべき姿を指し示すでしょう・・・あらあらあらぁ。こちらの女性の方は魔力がかなりずば抜けて高いみたいですよ。他は平均をやや下回るくらいですが、それを補って有り余る魔力の高さです。初期職業は…既にウィッチのようですね」
元々が魔法使いの家の生まれであったため、職業はウィッチでスキルも基本魔術を所持していたようだった。
「こんごともよろしく、チムチムさん。冒険者ギルド、ゼカイアはあなたを歓迎します」
受付嬢が始まりの挨拶を述べる。
新たな仲間の誕生だった。ギルド内から歓声が上がる。登録冒険者の数はそのギルドの規模、強さを表す。ギルドが有名であるほど仕事も増える為、人が来るのは皆が歓迎するし、同じギルドの冒険者達は助け合うことをモットーとしている為、新人が増えることも歓迎していた。
俺達は頼んでいた朝食に加えて、エールを頼んで祝杯を上げた。早朝からお酒を呑むのも初めての体験だった。祝いの席だから問題ないよな? エルルとチムチムは喜んでがばがば呑んでいたが。
「よろしく、チムチム!」
エルルがチムチムとジョッキを打ち鳴らす。こつん、じゃなくガツン、とやるのがこの世界の流儀のようだ。木のジョッキをがっちり打ち付けて、エールの泡が飛ぶ。
「よろしくな、チムチム!」
俺もチムチムとジョッキを打ち合う。雰囲気だけでも楽しかった。
「よろしく、エルル、シシトウ」
俺の苗字、本当はシシドウなんだが、もうこのままでもいいかなと思えた。最近はそのほうがなれた。自分でもそう名乗っていたしな。
「新しい仲間との出会いを神に感謝~」
エルルが手を重ね、目を閉じて神への感謝を伸べた。
「これで俺達のパーティにもアタッカーが増えた! 討伐系のクエストもいけそうだぜ!」
アタッカーではあるが、後衛2、非戦闘員1、犬1のパーティだった。
「私、詠唱、時間がかかる。その間、敵をひきつける、人が必要」
「ん、そこは肉の壁。シシトウがいるから大丈夫」
ゲームでも壁役は重要であるが、それを自分がやれるかと言うと・・・。
「まて、俺に壁役は無理だ! いいとこ囮役と言ってくれ!」
「じゃあ、シシトウは囮役で決まりね!」
突撃役や壁役から囮役へのパーティ内ジョブチェンジ。生存率は高まったと思いたい。
「あ、アタッカーが増えたけど、根本的なパーティの問題は解決していないじゃないか!」
「やっぱりね。前衛職の人も欲しいよねぇ」
「シシトウ、前衛、無理?」
「無理無理無理無理! 俺、実は雑用だから! バウエル、一緒に囮役、頑張ってみないか?」
「バウ?」と、バウエルが不思議そうに俺の顔を覗き上げる。
「なぁ、エルル。バウエル、人間の言葉をしゃべり始めたりしないかな」
ファンタジーのマスコットは人間の言葉をしゃべったりしている。バウエルも人間の言葉をしゃべり始めたりしないだろうか。
「なぁに言ってんのよ。犬が人間の言葉をしゃべるはずが無いじゃない。プークスクス!シシトウったら夢見がちな少年みたい!」
エルルが不自然な笑い声を出す。
「え、なんか笑われた」
「魔法使い、使い魔と意思、交わす。それ、覚える」
チムチムがフォローしてくれた。
「え、雑用でもその使い魔スキル、覚えられるの?」
「動物使い、いる。彼ら、『動物会話』、で、覚える。チムチム、それ覚えていない。だれか、知る人、探す」
「動物会話はコモンスキル扱いなんだ? 知らなかった」
エルルが意外そうなことを知って感心している。
「動物会話、魔法使い、使い魔を使役する。その為、覚える。動物使い、動物を使役する。その為覚える。用途同じ。同一スキル」
ゆえに共通スキル。専門のスキルではないと言う事は、村人職でも覚えることが可能。すなわち、雑用でも覚えられるスキル、と言う事だ。
「よぉーっし、いつか覚えるぞ!」
俺は新たな目標も見つかった。これからが楽しみだった。
早朝に開かれたささやかな宴。終わるのはまだまだ先だ。
第6話へと続く
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