好きってなんですか?
バハル船長に回収された後、私は自分の任されている店『アリアド』の
私が工房に入ると、小さな宝石を台座につけていた、この工房を束ねる職人長が私の元へ寄ってきた。
「ラオファン
「
私がそう言うと、周りにいた職人達も
「お
「鎖よりシルクリボンの方が
職人長はニコニコと笑いながら
「お嬢さんは本当に客の心を
「職人の心だけではなく消費者の心を摑まなくては」
その後、職人長と話をしていると工房のドアをノックする音が
「お嬢様がいらっしゃってるとおうかがいしましたが、ちょっとお借りしてもよろしいでしょうか?」
声の主は小説部門の
何かあったのか、私が
「お嬢様、私の
私はマチルダさんに連れられて作業部屋に案内された。
いつ来ても本だらけの部屋に一人の少女がたたずんでいた。
「お久しぶりねバナッシュさん」
その少女、ジュリー・バナッシュ
「ユリアスさん!? あの、お久しぶりです……」
私は彼女が手に持っている紙を見つけると手を差し出した。
「見せてくださるかしら?」
バナッシュさんはプルプルと
紙の内容は小説のプロットと言われるものだった。
プロットとは物語のあらすじを考える上で必要なもので、どんな流れで書いていくか決めるための地図のようなものだ。
彼女が今書こうとしている小説は、『
彼女が今おかれている
これは、確実に売れると
彼女のプロットは、自分の
「……勉強になるわ」
私が思わず
「何か?」
私が首を
失礼ではないだろうか?
「この本はお嬢様には必要のないものだと思います」
どういうことだろう?
私が反対側に首を傾げるとバナッシュさんが口元をヒクヒクさせながら言った。
「ユリアスさんの周りにはいい男しかいないじゃない!!」
「そうでしょうか?」
本気で言ったのにバナッシュさんは自分の頭を
「そうでしょう!
私は苦笑いを
「お兄様は実の兄ですしマイガーさんはドM。王子殿下にいたっては
私の言葉にマチルダさんとバナッシュさんの
「お嬢様、正気ですか?」
「私、ユリアスさんのそういうところ
どういうところなのかちゃんと説明してほしい。
二人の
「ユリアスさん」
「は、はい。なんでしょう?」
「ずっと聞きたかったんだけど、ユリアスさんは
バナッシュさんの言葉に私は混乱状態になった。
〝好き〟とはどういった感情なのか想像もつかない。
「逆にバナッシュさんは誰が好きなんですの?」
バナッシュさんは眉間のシワを深くした。
「今までは誰よりも格好いい人が良かったから王子様が好きだったけど、今はこんな私の
鼻をフンッと鳴らしたバナッシュさんの
「私も言ったんだから、ユリアスさんも言いなさいよ!」
少し
「好きとはどうすれば解るのでしょうか?」
「はあ? そこからなの?」
代わって、マチルダさんが近づいてきた。
「では、お嬢様。側にいて楽しいと感じる男性はいますか?」
ハッキリ言ってビジネスが
「えっと、たくさんいますわ」
バナッシュさんとマチルダさんのため息にビクッと背中が
「では、格好いいと思う男性はどうでしょう?」
「お兄様です」
マチルダさんの質問に
駄目だったらしい。
「家族以外に決まっているではありませんか!」
マチルダさんの額に青筋が浮かび始めた。
もう、
「家族以外で格好いいと思う男性です!」
しばらく考えた。
そういえば階段から落ちたところを王子殿下に助けてもらった時に格好いいと思った……ような気がする。
「そんなに
バナッシュさんは興味をなくしたようにマチルダさんの部屋にたくさんある本の中から一冊手に取りペラペラとめくり始めた。
「初恋……」
まだなのかもしれない。
これは女性として終わっているのかもしれないと少し
「お嬢様、仕事が絡まない状態で
ぱっと思い浮かんだのは、婚約
王子殿下は私を楽しませるため、速いステップを
王子殿下といて、確かに私は楽しかった。
「フリーズするほど? ……お嬢様、
「えっ? あっ、はい」
今の考えは危険だ。
この考えを口に出したら
たぶん、これを認めてしまえば私の自由はなくなる。
不確かな感情に流されるわけにはいかないと、強く思った。
すると、マチルダさんが
「お嬢様、すぐに気持ちに気づかないふりなんてできなくなりますよ」
マチルダさんの言葉に私は息を
私は忘れていたのだ。
マチルダさんが予言の
マチルダさんには一体何が見えたのだろう。
私が王子殿下に少なからず
私が、マチルダさんの言葉で気持ちを自覚させられている間に、バナッシュさんがいいことを思いついたと言わんばかりに右手をスッと上げた。
「マチルダ先生! 恋の解らない
「まあ素敵! そうしましょう! ね、お嬢様」
私はぎこちなく頷いた。
その後、スイーツバイキングで有名なお店に案内され、マチルダさんとバナッシュさんに〝愛とは何か〟を語られながらケーキを食べた。
いろいろな感情の話に、なかなかケーキが
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