市場リサーチは幸せな時間です
私が通うこの学園には
いわゆる、貴族ではないが商家の子供や
それでも、学食の広いスペースの半分以上が貴族用のスペースで、庶民用のスペースは
貴族用のテーブルは丸テーブルで
対して庶民用のテーブルは長く
ちなみに、庶民棟の中庭と貴族棟の中庭は別物だったりする。
この格差が私は
私にとって庶民は
私が開発するのは庶民の生活に必要な物、便利に時短できる物、安くて
それって庶民の
だからこそ、私はできるだけ庶民の皆様という名の消費者様の意見が聞きたいのだ。
そこで、私がよくするのは学食の庶民用のスペースと貴族用のスペースのギリギリの席に座ることだった。
庶民の皆様のトレンド話なんて大好物だ。
まあ、庶民の皆様は私が
混んでしまえば座らざるをえないのがみそだ!
「ノ、ノッガー様!」
庶民棟の女の子にはじめて声をかけられた。
彼女は確か、ワイン製造をしている家の
庶民棟の中でも一、二を争うほどのお
私は手を
「何かしら?」
「……あ、あの」
精一杯の笑顔なのに怖く見えるのか、周りがシーンと静まりかえったが、私は気にせずルナールさんを見つめた。
「はい」
「あの……その
彼女が言ったのは私が店に来る若い女性の話を
私は自分の
「この靴って
私の言葉に彼女はパァーっと
「私も持ってるんです!」
「嬉しい! この靴うちの新商品なんですの!」
「えっ? ってことは、庶民人気ナンバーワンのブランド『アリアド』はノッガー様のお店なんですか?」
彼女が
「ええ。ちなみに、今はこの赤茶色しかないのだけれど何色なら
「えっ? あの、えっと、
私はポケットから手帳を取り出すと彼女の言った色を書き取り、満足げに言った。
「この色の靴を作ってくるので、また意見を聞かせていただける?」
「も、
「あ、あの! それって新作を一番に見せてもらえるってことですか?」
彼女は貿易船の副船長の娘、グリンティアさん。
ルナールさんの親友にして、庶民棟一の美人さんである。
私は
「私も参加していいですか?」
「ええ! 貴女は何色がいいと思う?」
「断然、モスグリーンです」
私は頷きながらメモした。
なんということでしょう! ものすごい
幸せです!
「ユリアス」
その時、私の名前を呼びながら
「ちょっといいか?」
え~今
行きたくない……とりあえず無視していいだろうか? ……て、相手は王子殿下だ……ダメか。
「王子殿下が私なんかになんの用事があるのですか?」
「いいから予言書を持って来てくれ」
王子殿下の顔色が悪い。
小説のはじめの方には出てこないが、主人公が王子様と出会うシーンもちゃんとある。
人通りの少ない裏庭に続く
ああ、バナッシュさんが王子殿下にタックルでもしたのかしら?
私が反応を返さないせいか王子殿下は
「ユリアス、君は知ってたな」
「何をでしょうか?」
「例の人物が俺に
私は手帳をしまいながら満面の笑みを作った。
「だって、
「面白いって、危うくキスする所だったぞ。……君はそういう人間か」
「ええ、私がご説明した話、身をもって信じていただけたでしょう?」
私の笑顔に王子殿下は深いため息をついた。
そして、
「ちゃんと読むから持ってきてくれないか?」
「……
私は王子殿下が少し
庶民棟の皆様が嬉しそうに頷いてくれたのを見て、私は頭を軽く下げるとその場を後にしたのだった。
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