童話「五色の鬼」

@SyakujiiOusin

第1話

童話「五色のオニ」


百神井 応身


 オニというと、こわい顔をして頭に角をはやし、かなぼうを持った姿を想像します。でも、本当はどんな姿をしているのか誰もしりません。

 オニは、北東の方角から、人にしのびよってくるのだと信じられていました。これを「ウシトラ」の方角といいます。

 方角は、干支(えと)といって、生まれ年による動物で表します。

 皆さんが知っているように、ねずみ・うし・とら・うさぎ・たつ・へび・うま・ひつじ・さる・とり・いぬ・いのしし、で表すと、

「ウシとトラ」の間になりますから、ウシの角をはやし、トラの皮のパンツをはいた姿で目に見える形にしました。


 でも、オニがおそろしいのは、力があって乱暴だからということではないようです。

 むかし、サトリを開いて立派な人になろうと努力している人たちにとって、ジャマをするものがありました。

 心にうかんできてしまう悪い考えが、良いことにフタをしてしまうのです。そのフタをしてしまうものをオニとよびました。

 アカオニとアオオニはよく知られていますが、それだけではなくて、五色のオニがいるのだと思われていたのです。

 赤鬼は、何でも欲しがる欲深い心。

 青鬼は、怒りの心。まずしい心。

 黄鬼は、自分中心のわがままな心。

 緑鬼は、けんこうを考えないで、だらしないことをする心。

 黒鬼は、不平不満ばかりをいう愚痴。卑しい気持ち。


 そういう悪い心に豆をぶつけて追い払い、平穏を願うのが、節分の行事になりました。

 でも、本当のオニは、自分の心の中に住んでいるので、自分で追い払うほかありません。

 放っておくと、オニはどんどん大きくそだってしまうので、こわいのです。

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