第6話 風呂場

「風呂に入ってくる」

サクラはトナピガモ汁の調理が終わった後、そう言って調理場を後にした。

「ちょっと…」

クルムは止めようとしたが、サクラはそそくさと風呂場に向かう後ろ姿を見てるだけしかなかった。


サクラは脱衣所で服を脱ぎ、お湯が満タンに入った湯船から洗面器でお湯をすこうとする。すると手が滑り、洗面器がプカプカと湯船の真ん中まで流れてしまう。

「あ~あ」

サクラは残念そうな顔をして洗面器を取ろうとして立ち上がると、

突然後ろから人の気配を感じる。今この家にはクルムとその彼女が連れて来た男だけしかいないはず。しかしその気配はどちらかでもないのはすぐに分かった。

う、う…

その謎の人物によってサクラの首がタオルによって絞められる。

最初は悲鳴を上げるが、じょじょに呼吸ができなくなり助けを呼ぼうともがき苦しむが圧倒的な力によってそれすらままならない。

それでもタオルを掴もうと体を動かすが、余計苦痛が増しさらにもがき苦しむ。

そして首がタオルによって完全に閉塞する。その瞬間パニック状態だったサクラは脳内の酸素を完全に消費し、酸欠状態になり脳機能が停止する。力がすーっと抜けて気を失い筋肉は弛緩し、タオルを離そうとした腕は宙ぶらりんとなり、保っていたバランスは崩れ体は重力のままに下に落下する。サクラの身体はうつぶせのまま硬い石床にたたきつけられ、この時まだ動いていた心臓も停止する。


悲鳴を聞いたレツユキが風呂場をかけよると、入り口から黒い影が出てくるのが見えた。しかし廊下は薄暗く、だれなのかわからなかった。


「おい…おい!」

レツユキがサクラをひっくり返して呼びかけるも応答はない。

サクラの胸に耳を近づける。サクラはこのとき全裸であるが誰も気にしていない。しかし心臓や息の音は聞こえない。

「心拍も呼吸もとまっている」


俺は心臓マッサージと人工呼吸を始める。転生前に近所の防災訓練で習った知識だった。


遅れてクルムがやってくる。レツユキが倒れていた経緯とサクラが危険な状態なことを説明する。

するとクルムが、

「私の魔法なら電気ショックを与えられるかも」

それを見ていたクルムがサクラの手に胸をあてて魔法の力で電気ショックを与える。

俺がサクラの口に人工呼吸を行う。そして心臓マッサージと電気ショックをまたやる。

それを繰り返してるうちにサクラの目が徐々に開き始め、レツユキとクルムを見つめる。

「私は…どうなっているの」

サクラの目が覚めると俺とクルムは目を見つめあって笑みを浮かべた。


















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