第21話 『人魚姫』


 こんにちはっス!

 今日はダイゴさんの代わりに来ましたッス!


 シンジッス!


 ダイゴさんは今、「北陸のユリゲラー」を探しに富山に行ってます!


 だから今日は自分が代わりに話をさせてもらうッス!

 ウッス!

 ちょっと隣、失礼するっす!


 それじゃ、早速はじめるッス!


 昔々あるところに人魚姫がいたっす。

 人魚姫はひょんなことから王子様に出会って恋に落ちるんス。


 人魚は人間になりたくてなりたくて悩むんす。

 そして、魔女から“声と引き換えに人間になれる薬”をもらってそれを飲むんス。


 ただ、人間になる条件はそれだけじゃなかったんス。


 もう一つの条件は「もしも王子様が他の女性と結婚したら泡になって死ぬ」というものだったんス。

 人魚姫はそれでも人間になることを選ぶんすね。


 ……いや、自分、この人魚の気持ち、痛いほどわかるッス。

 恋をしてはいけない相手に対する恋心というのは本当に辛いッス。


 自分も似たような経験は山ほどありますから。

 例えば――


 そう。

 彼女もちの先輩に対する恋心とか。


 すごくせつないッスよ。

 自分もその恋が成就する薬を魔女に持ち掛けられたら、飲んでしまうかもしれないッスね。 


 ……え?

 それってダイゴさんのことじゃないかって?

 自分が、ダイゴさんを狙ってるんじゃないかって?


 あはは。

 やめてくださいよ。

 なに馬鹿なこと言ってるんスか。


 そんなの――
















 狙ってるに決まってるじゃないッスか。



 全く、愚問すぎて草が生えますよ。

 大草原不可避ッス。


 え?

 男性が好きなのかって?


 やめてくださいよ。

 愚問ふたたびッスよ。

 自分は――















 あらゆる人間が性の対象ッス。


 ええ、そうです。

 男だろうと女だろうと。

 2次元だろうと3次元だろうと。

 どんな性癖があろうと。

 擬人化だろうと概念だろうと。


 好みの人間は全員ターゲットっす。

 というか、人間だけじゃなくアニメキャラもターゲットっす。


 ええ。

 アニメや漫画のキャラにも本気で恋してますよ。

 いや、むしろそっちの方が愛してるかもしれないッスね。


 アニメや漫画、小説・ラノベは素晴らしいッス。

 人間の文化の極みっす。

 彼ら彼女らは本当に可愛い上に、僕のことを裏切りませんしね。


 あ、ちなみに。

 僕の嫁は3桁以上いますよ。


 え?

 節操がない?


 あは。

 そっすね。


 確かにそうかもしれないっす。

 アニメサークルの仲間は自分のことを



 『性癖の国士無双13面待ち』

 『性欲の廃課金者』



 って呼ぶっすもん。

 まあもちろん犯罪になるようなことはしな――


 ん?

 あれ?

 あれあれ?


 あらちょっとやだ。

 よく見ると――



 あなたも結構アリ、ッスね。



 ……ああ、すいませんッス。

 ちょっと涎が垂れてしまったッス。

 

 で、人魚姫なんすけど。

 結局人間になっても声が出ないので恋は成就せず、王子様は別の女の人と結婚することが決まるんッス。


 人魚は王子様が他の人と結婚してしまうと自分が死んでしまうので、王子様を殺そうとするんっす。

 でも――結局殺せず、自分が泡になって死んでしまうんッスよ。


 マジで悲恋っすよね。

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