第5話 『さるかに合戦』
ちす。
今日もやべーくらいあちぃな。
こういう暑い日は逆に熱いもん食うといいらしいってカーチャンから聞いてよ。
昨日、めちゃくちゃ辛い唐辛子入りの蒙古タンメン食ったのよ。
とにかく汗をかいた方がいいっつーからよ。
辛いもんを食いまくったわけ。
……そしたらよ。
今日、死ぬほどケツがいてえよ。
お前ら、あんまりカーチャンの言うことマに受けちゃだめだぜ。
そんなことより、今日もおもしれー話、用意してきたからよ。
ま、聞いてくれよ。
すんげー昔のことだよ。
とある村に猿とカニがいたのよ。
でよ。
柿の種を拾った猿が、美味そうなおにぎり持ってるカニに、こう持ち掛けたのよ。
「この柿の種とおにぎり交換しよう。柿の木が育てばおにぎりよりいっぱい食えるぞ」
ってよ。
おにぎりと種を交換したカニはよ、早速、それを土に埋めて育てたのよ。
一生懸命育てたところで、猿がやって来てよ、木に成った柿を独り占めしてよ、あろうことか、柿をぶん投げてカニを殺しちまったのよ。
……ひでー話だよ。
俺ぁよ、ここまで聞いてブチギレたぜ。
この猿だけは許せねえよ。
柿を横取りしただけじゃなく、命まで奪っちまうなんてよ。
はっきり言って、人間のやることじゃねえよ。
あ?
猿だから人間じゃないのは当たり前?
……。
…………。
………………ほんとだ!
おめー、頭いいな。
どっかいい大学出てんのか?
でよ。
実はこのカニには子供がいてよ。
カニの子供は猿に復讐しようって考えんだよ。
ま、当然だよな。
カーチャンを殺されたんだからよ。
俺でも、ぜってーゆるさねーぜ。
ガセ情報で俺のケツを爆発させたカーチャンでも、カーチャンはカーチャンだ。
でよ。
カニは仲間を集ったわけよ。
カニじゃ猿には勝てねーからな。
んで、その仲間がよ、ハチ、臼(うす)、牛のうんち、栗、だったらしいわ。
…………ねーよ!
ねーだろ!
いや、ハチは分かるよ。
臼と栗もまあ許してやるよ。
でもよ……
牛のうんちってなんだよ!
認めねー!
俺ぁ、ぜってー認めねーよ!
そんなもん、牛のうんちを戦力として認められるかよ!
俺もよ、昔は族同士でよくケンカしたもんだよ。
そのたびに、知り合いのつえーやつに助っ人を頼んだもんだよ。
でもよ……。
牛のうんちを頼ろうと思ったことはねーよ!
いい加減にしろよ!
カーチャンの敵討ちだろうが!
もっとちゃんとしたダチを選べよ!
……とまあ、そんな風に思ったんだけどよ。
なんと、猿の野郎、牛のうんちに足を滑らせて転んだらしいのよ。
そんで、その上から栗とかハチが襲い掛かったんだってよ。
牛のうんち、すげー役だったんだって。
人間、思い込みはよくねーよな。
俺ぁ、マジで牛のうんちリスペクトするぜ。
は?
臼は何してたかって?
わり、聞いたんだけどよ、覚えてねーわ。
でよ。
猿は結局やられちまって、カニは見事敵討ちを果たしたってよ。
マジでめでたしめでたしだよな。
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