第2話 『鶴の恩返し』
うーす。
今日はよ、ちょっとためになる話しようかと思ってよ。
これまたすんげー昔のことなんだけどよ。
クッソ田舎にジジイとババアが住んでたんだって。
んでよ、ジジイが街に買い物に行ってたら、その途中に鶴が猟師の罠にかかってたんだって。
ジジイ、それを助けてやったらしいんだわ。
ま、当然だわな。
男なら、弱い奴とか傷ついてる奴を助けるのはマジ当たり前だべ。
いや、別にいいかっこしようってわけじゃねーんだけどよ。
それが俺のポリシーってやつなんだわ。
それというのもよ。
実は俺も、昔よ、似たようなことがあってよ。
大宮のイオンに行った時、トイレで禿げたおっさんが地元の不良どもにカツアゲされてたわけ。
俺よ、そういうのマジ許せねータイプだから、やめとけつって声かけたのよ。
そしたら向こうは当然ブチギレだよな。
5人もいやがったから、情けねー話、ボッコボコにされちまったよ。
奴ら、俺を殴るだけ殴ったら飽きてどっかいっちまったよ。
でもその隙におっさんが逃げたからよ。
ま、俺が恥かいて終わりならそれでいいやって、結構満足してイオン出たの。
そしたらよ。
さっきの逃げたおっさんが入口で警察つれて来てたの。
逃げたんじゃなくて警察呼びに行ってくれてたんだな。
でよ。
警察に色々聞かれたんだけど、めんどくせーから全部無視して帰ろうとしたんだよ。
まあよ、警察はチンピラ同士の喧嘩だっつってすぐ帰ったんだよ。
けど、おっさんだけは引き下がらねーの。
お礼をさせてくれ、せめてご飯だけでもって言い張るわけ。
しょうがねえから、ちょうど腹も減ってたし、そのおっさんの家で飯おごってもらうことにしたの。
でよ、そのおっさんの家についていったら、若い女がいるのよ。
なんか生意気そうなヤンキー女でよ。
俺のこと見てすんげー嫌そうな顔してるわけ。
そんときは犬派だった俺が苦手な猫もいたし、正直なとこ、来るんじゃなかったって思ったぜ。
でもよ、その女が作ったチャーハン、くそうめーの。
料理の手際もいいし、お茶とか淹れてくれたし、趣味も裁縫とか言ってたし、なーんか見た目と違ってクソ家庭的なのよ。
そのギャップがよかったんだな。
俺ぁすっかり惚れちまってよ。
おっさんの目を盗んで、
そう。
それが俺とユミの出会いってわけ。
俺ぁ神様とか信じねえけどよ、そんときばかりは感謝したね。
ユミと出会えた奇跡によ。
まあ、俺が何を言いてえかっつーとだな。
人助けをすると良いことが帰ってきますよってことだ。
そうそう。
鶴を助けた爺さんとこにも、鶴が恩返しに来たんだってよ。
まじでめでたしめでたしだよな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます