ホラー映画で誰が死ぬのか即座に判別できる能力を持った青年の超能力バトル

紅葉

第1話

「まさか…お前の能力は…」


 1人の青年が傷だらけの体で校舎の廊下に横たわっている。青年、勇太はたった今見知らぬ男から異能攻撃を受けたのだ。見下ろすように立つ黒ずくめの男。男はサングラスを外しながら勇太に話しかける。


「あぁそうだ。私の能力は」



【神の悪戯/悪魔の微笑】《カラー・ボックス》

対象の色を自由自在に変える事ができる



「そ、そんなばかな…」


 予想外な男の能力、その恐ろしさに勇太は体の震えを抑える事ができなかった。そんな青年の動揺に堪らないとばかりにくすくすと笑う男。


「そうだ、私もあまりの恐ろしさに最初はこの力を拒絶した物だ」


「………」


「だがこれは運命だ。この恐ろしい異能を使いこなせという、神からのお告げだと私は受け取った」


 男は堅い決意と共に勇太を見下ろす。その瞳はどこまでもどす黒く、けれど確かに透き通る様な純粋な目をしていた。自らの異能を死んでも使いこなすという覚悟が、その男にはあった。


 色を変える、とはつまり色を自在に変える事が出来るという事だ。その気になれば世界を支配する事も他人の生死を自在に操る事だって可能だろう。全身の震えと恐怖を押し込めようと勇太は自らを鼓舞する。


「そ、それだけの能力だ!きっと何かデメリットがあるはずだ!」


 異能が宿った人間は超常の能力を使用する事ができる。だが強い能力にはそれ相応のデメリットがある物だ。これだけの異能ならば当然、相応しい欠点もあるはずだ。脚を震わせながら勇太は男に問いかける。男は今度こそ腹を抱えて笑った。


「くく…デメリットは無い」


「なん…だと……」


「私は無条件で、幾つもの物体の色を変える事ができる」


 呼吸が止まりそうになった。あまりの恐怖に全身が震えるのを止める事ができない。無条件でそれだけの異能だと?もはや人間が手にして良い能力ではない。それは即ち…この世ならざる人外の領域だ。


「そうだ、神の御業に等しい奇跡だ」


「うわぁああああ!!!」


 勇太は恐怖した。傷だらけの体を引きずりながら2Fの渡り廊下をなんとか走り抜けようとする。しかしそれを黒ずくめの男が逃すはずが無い。



「さぁ互いに殺し合おう。異能力者による!超常の決闘だ」



 男は勇太を始末する為に行動する。体躯の良い肉体を惜しげも無く見せつけながら男は夕暮れの校舎を歩き出したのだ。自らが最強と自負する異能を駆使し、他の異能力者、【祝福されし者】《サイキッカー》を始末する為に。


「絶対に逃さない…お前を殺して私は更なる成長を遂げる」



色を複数箇所だけ自在に変える人間と

ホラー映画で誰が死ぬのか即座に分かる青年の


死闘が、始まる

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ホラー映画で誰が死ぬのか即座に判別できる能力を持った青年の超能力バトル 紅葉 @kawasemi3

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