マイ美女軍団



 わたしの内側には自慢できることとて何もないが、外付けHDDのような大容量の棚ボタ的他力自慢は数々あって、なかでも特筆すべきは友達が美女揃い、ということである。わたしの女友達は、美人ばかりなのだ。そういう人を選んで付き合っているとしか思われないほどである。わたしの招く友人たちが揃いも揃って美しいので、母屋の義母が、


「ま~、あんたのお友達はみーんな、きれいやねー」


 と去りゆく彼女らの車を一緒に見送りながら感に堪えないというように漏らしたことがあった。これでわたしが男だったらまさにウハウハだったろうが、なに、女であっても十分、心からウハウハである。わたしは美しい女性が好きだ。そういう人々と並んだ自分がいかに不利かということは、もはや考えない。とりあえず鏡でもなければ自分で自分のことは見えない、という事実は、人間の幸せのひとつであると言ってよかろう。


 そのようなマイ美女軍団のなかで、ぶっちぎりの話題性を備えた人物というのが、何度もこの駄文シリーズにご登場願った泉州の生ける伝説、はー太郎・ザ・グレイト永世モテ聖である。数えてみればもうこの人との付き合いも十八年目になるわけで、今までの人生の半分の歳月、ということになる。その間わたしはずっと「はーウォッチャー」としてモテ聖に張り付いてきた。ネタの火薬庫たるこの人は、わたしのニューロンの一束を常に鷲づかみにしており、許されるものなら来年の二月末頃まで、この人の話を毎週書き続けて間を持たせたいくらいである。とにかくすごい。その辺のぽっと出とはスケールが違う。わたしの知る実在の人物で、誰からの反感も買わずに「男子はみんなウチのこと大好き、と思ってた!」と豪語出来、しかも実際そうだったり、申し込まれたデートをこなすのに一カ月単位のシフト表を作らなくてはならなかったり、昔男たちから貢がれた品々をネットオークションで売り払って高額の小遣いを稼いでいたりするのは、はー太郎・ザ・グレイトただ一人である。出産を境に肥り出し、今では往時の目方プラス10kg超という身体になったが、首から上には決して肉がつかない体質(ジャストライク池上希実子)で、差し向いでこたつに座ってしゃべっていたら巨大化したことも忘れさせてしまう天性のマジシャンぶりを見せつけ、他人に対しては寸毫容赦のないうちの夫にすら「太ると醜くなるタイプの人は多いけど、はー太郎は太ってもアリやと思う」と言わしめる。小学校三年生の頃まで家の外では全く口をきけない、いわゆる「場面かん黙」の子どもだったのに、自分の美貌に気付いたことを契機にしてそれを克服していったというエピソードは、何度聞いても味わい深い。







「やっぱりデブにリボンはあかんと思った。ようわからんけど外国のクリスマスの食卓みたいになるし、乙子にあげる」


 と買ったばかりのリボン付きおされパンプスを譲ってくれたり、


「ウチこないだ色無地着たら、完全に関取やった」


 とその写真を見せてくれたり、近頃は自虐も板に付いてきてその魅力はいや増すばかりである。そう、はー太郎の愛される理由は、本当の、愛される底力は畢竟ここにあると言ってよい。柔らかく、ひろく、丸い心だ。だいたい、おバカさんのことを指す「はー太郎」という呼びかけを簡単に受け入れているという一事がすべてを物語っている。スーパー玉出で買ってきたヤマザキスイスロールを恵方巻きよろしく無言で一本食いするなどして現在も増量攻勢の手を緩めていないはー太郎は、この駄文を読んでも絶対に怒ったりしない、むしろへらへら笑いながらうちに電話をかけて来ると、わたしは断言する。わたしはあなたが大好きよ。

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