第16話
早速イルカは海中に潜り、エコーロケーションを展開。
これにより、反射する超音波で目視しなくても物体の形状を探る事が出来る。
広大な海をいちいち探らなくとも、沈没船の位置がピンポイントでつかめる、という算段だ。
「この先、船らしき物があります。 トオルさん、ミチキさん、僕の指示に従って、海の中を探って下さい」
「あいよ」
アンクの指示に従って、海中を散策。
視界いっぱいに青い海が広がり、ありとあらゆる魚たちが、そこら辺を泳いでいる。
「逆に広すぎて怖いわ」
普段限られた水槽を泳いでいるペンギンにとって、海は果てしなく広い宇宙。
下手に泳いで戻ってこられるか、心配になる。
それでも、この深い青色と美しい珊瑚礁が、トオルとミチキの胸を打った。
「トオル、あれかな?」
「……ん」
しばらくして、何か船らしき物の残骸が見える。
沈没船であった。
トオルとミチキはその船の周りを泳いで、文字を探す。
「これがトミー号なら、ラッキーだけど」
巨大な帆船だが、保存状態は極めて悪い。
陸に引き上げた瞬間、バラバラに崩れそうだ、とトオルは思った。
そして、船のボディに、T、の文字が見て取れた。
「トオル、いきなり来たかな?」
「まだ油断すんな。 トオル号かも知れねーぜ」
んな訳ねーか、と独りごちたが、O、MM、と文字が続き、いよいよ確信した。
「トミー号だ!」
ミチキが叫ぶ。
文字はかすれていたが、最後のY、の文字まで読み取ることが出来た。
トオルは、事前に友恵に言われた通り、メジャーを取り出し、船の周りの採寸を始めた。
そして、それが終わると、地上へと戻った。
「よくやったぜ、二人とも!」
地上でトオルとミチキの頭をなで回す友恵。
スマホを取り出し、あるところに連絡を取る。
「……ああ、私だ。 船、見つけたからよ。 今から言う寸法通りのもん、作って用意してくれ。 頼んだぜ」
友恵があるところに注文した物。
それは、巨大な浮き輪であった。
あの晩、友恵が思いついた計画とは、C、の形の浮き輪を船の両脇にはめて、浮かび上がらせる、というものであった。
日本の浮き輪メーカーにプロジェクトの概要を説明し、面白そうだ、という社長の了承を得て、計画が実行されることとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます