第13話

その日、友恵は都内のホテルに来ていた。


ここに、とある大物俳優が宿泊している、とのことである。




 昨日、友恵はペンギンらがイルカを仲間にしたという報告を受けた。


部屋で鼻くそをほじりながらドラマを見ていた友恵は、マジで! と驚く。




(まさか、ほんとにイルカを仲間にしちまうとは……)




 友恵は慌てて起き上がり、机に向かった。


えんぴつを鼻と口の間に挟み、うんうん唸る。


どうやって、沈没船を引き上げるか。


気づくと、ノートには見ないで書いたドラえ〇ん、ミッ〇ーが描かれていた。




(やっべ、こんなことしてる場合じゃねえ!)




 足らない知恵を絞り、どうにか一つのアンサーに辿り着く。




(だが、これを実行するには金がいる。 ……スポンサーが必要だ)




 そして、都内に観光に来ていた知り合いから偶然、大物俳優、ジョニー・〇ップを見かけたとの情報を入手した。




(パイレー〇・オブ・カリビアンの主人公なら、喜んで出資してくれるハズだ!)
















「……一体、どこにいやがる」




 ラインで友達と連絡を取るも、何号室にいるかまでは分からない。


廊下をウロウロしていると、やたらと人が多いことに気がついた。




(……マイクを持った奴までいる。 まさか、今から取材がはじまんのか?)




 その時だった。


自分の横を、一人の個性的な女性がすれ違う。


派手な柄のシャツに、サロンで焼いた黒い肌。


王〇のブランチでよく見る、リリコである。




(やっぱり、取材に来てんのか……)




 友恵は、リリコの後を着けた。


本番前にメイクの確認だろうか。


トイレの扉を押し、中へと入ると、鏡の前に立った。


さり気なく横に並ぶと、声をかける。




「なあ、これから取材なんだろ?」




「……」




「私もあいつに用があんだわ。 取材、代わろーぜ?」




 すると、リリコの口元がつり上がった。




「冗談はよして」




「……だよな」




 友恵は諦めたフリをして、リリコの後ろを横切ろうとした。


次の瞬間、素早くヘッドロックをキメる。




「悪いな、手段選んでる場合じゃねぇんだ」




「……」




 友恵のみぞおちに、リリコの肘がめり込む。




「がはっ……」




「インタビューをしたいなら、私を倒してからにして頂戴」








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