第2話

その夜、トオルはある人物の所へと向かっていた。


飼育員の生田友恵(35)の所である。


トオルは、身長よりも遥かに高い扉をくちばしで叩いた。


カン、カン、と甲高い音が響く。




「なんじゃわれえええっ」




 現れたのは、金髪をなびかせた美女である。


こんな飼育員がいたら嬉しい。




「オレッス、トオルっす」




「……何だ、トオルかよ。 どうしたんだよ、こんな夜分に」




 トオルは事情を説明した。


これから自分らでダンスユニット的なものを組みたいから、それを披露する舞台を整えて欲しい。


すると、友恵は鼻の穴を小指でほじりながら、無理っしょ、と言った。




「むりっしょ」




「いやいや、できますって。 俺、超本気なんで!」




 その場でターンして、腕を横に持ってくる。


シャキン、という効果音が付きそうだ。




「……まあ、あんたらエサ代高いし、それくらいやってもらわないと採算合わないわな。 でも、お客に見せるんだから、それなりのレベルのものを準備させてもらうぜ」




 友恵は、一旦部屋に引き返し、ホワイトボードを持ってきた。


そして、ボードに書かれている文字を白板消し(というのかは知らないが)で消し、新たに文字を書き始めた。




「……そ、それは」




「そう、お察しの通り」




 白板には、何やら線が書かれている。


爆弾の導火線かな? そんな風に思っていると、友恵が言った。




「これは、トーナメント表。 夏のダンスショー、その出場権をかけた、トーナメントを実施させてもらう」




 トーナメントというからには、出場するチームが必要だ。


それを今から募集するのか、そうトオルは思った。




「正解だ。 今から、あんたらマゼランペンギンの中から、ダンスとか、そういうのに興味がある連中を募る。 で、その中で一番センスがあったペンギンを、実際にお客さんに見てもらうってなわけだ」




 こうして、後日、マゼランペンギンの中から、トーナメントに出場するチームを募ることとなった。
















「出場チームは4組。 試合は3日後、会場は中央広場で、審査員は友恵さんだ」




「……全然準備できてねーけど、平気なのかよ」




 ミチキの言った通り、2人にはダンス経験がない。




「条件はみんな同じだろ。 ここのペンギンどもにダンスができるやつなんていねーよ」




 トオルは、立ち上がった。




「どこ、行くんだよ」




「ダンスと言えば、あいつだろ」




 トオルは、カクテルブースを後にした。




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