ペンギンショータイム
@moga1212
第1話
白と黒の動物界のアイドルと言えば、パンダを思い浮かべる者が大半だろう。
しかし、忘れてはいけない、もう一つの存在。
ペンギン。
彼らは芸こそないが、その愛らしい姿で見るものに癒やしを与える。
これは、そんなペンギンたちの、爽やかな青春譚である。
PM8:00。
東京スカイツリー駅から数分の所にある、水族館。
ソラマチの5階にあり、入場料は大人2000円、子供800円だ。
入り口に入って最初に目に付くのは、巨大な水槽。
海藻や、小魚なんかが遊泳している。
しばらく道なりに進み、熱帯魚、クラゲなどの展示スペースを通過すると、突然、巨大なホールにたどり着く。
ペンギンブースである。
何を隠そう、この展示スペースこそ、この水族館の最大の目玉であり、そこにいるマゼランペンギンの数は、およそ50。
この時期、彼らは発情期を迎えていた。
「トオルは、彼女作らないの?」
そう質問を投げかけたのは、やや小太りのペンギン、ミチキ。
2人は、カクテルブースで酒をあおっていた。
「……少しでもモテりゃ、こんなとこいねーわ」
会場内は、夏限定の花火イベントが開催されている。
薄暗い中、デジタルの花火が水面に映し出され、ペンギン、人間問わず、周りはカップルばかり。
「あいつ、また違うメス連れ込んでるよ」
カクテルブースは6階にあり、そのラウンジから5階のメインブース(岩場があり、ペンギンらはここで生活している)が覗けるが、その中でも一際モテるペンギンがいた。
マゼランペンギンのディーン。
年は20で、顔はイケメン。
しかも、肉食。
ディーンの周りには、常にメスペンギンの取り巻きが出来ている。
「はぁ~、あいつのおこぼれでもいいから、分けて欲しいよ」
「ばっか、お前、あいつのせいで俺たちにメスが回ってこねーんじゃねーか」
ミチキが、恋してーっ、と叫ぶ。
発情期のペンギンらの大半は、理想の恋愛に焦がれている。
ウンウン、と頷きながら、マスターがコップを磨く。
「……」
トオルは、グラスの氷を眺めながら、あることを考えていた。
そして、口を開いた。
「この前、屋外ブースでカラスから聞いた話なんだけどよ」
「……どんな話?」
「品川のアクアパークには、すげーショーをやるイルカがいるらしい。 そのイルカは、アイドルの音楽に合わせて歌って踊るんだと。 それが評判で、連日満員御礼らしいわ。 俺の言いたいこと、分かるか?」
「……む、無理だよ。 オイラたち、アホじゃん!」
イルカと違い、ペンギンに芸を仕込むことは出来ない。
しかし、トオルは立ち上がった。
「俺らでアイドルユニットを結成すんだ。 ユニット名は、タキシード。 メスペンギンを釘付けにすんぞ」
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