第14話


「はっ、はっ、はあ……」

「……。」


 玲奈の手を引っ張りながら、せかせかと歩く事15分。俺達は騒ぎの中から離れ、人通りの少なくなった街の外れまでやってきた。


 1kmちょっとは来ただろうか、吹雪の中の魔王城は、先程より大分小さく見えている。

 周囲を見ると露店のような屋外型の店はもう無く、石造りの住宅の間に紐で洗濯物を掛けていたり、野良犬がふらふら散歩していたりと、さっきよりもだいぶ生活感がある光景に変わっている。


「祐……平気? ……疲れたら……休む……?」

「お前は流石に体育会系だな。いや大丈夫だよ」

「そう……」


 さらに周りを観察すると、なんだろう、店舗型の店……看板はついているがショーウインドウ等の無い、ひっそりとした佇まいの大きな建物がいくつか目に入ってくる。


「ここは……?」

「宿場だよ……もう少しで町の出口だから……この辺りはこういう感じ……」

「へー……」


 高速道路の出入り口にもそういう建物が集まっているらしいし、遠くからやって来た人がすぐ休めるような、そういうニーズを汲んだ商売が盛んなエリア、ということなのだろう。


「……休む?」

「ん? 休む場所あるならそうしたいけど、帰っちゃってもいいかな」

「うん……でもココ休憩も出来るよ……」

「休憩?」


 軽く逃げてたとはいえ、俺はここまで闇雲に来た訳ではない。買い物も済んだし、少なくとも家の逆方向へは来ていないので、帰って休む選択もあると思う。


「フリータイムが……」

「ああ、ラブホのシステムがあるのか。行かないけどな。っていうか折角異世界に来たんだからさ、どうせならもっとこう、それっぽい景色とかあれば見たいな」

「……私いちゃいちゃしたい……」

「で、でもそういうのいつでも出来るだろ? 俺お前と会ってから、イチャイチャしかしてない気がするんだけど」

「……。」


 玲奈の提案は嬉しいが、これから莉奈とどう接触を図るかとか、まだ話し合う必要がある。

 それに正直に言えばさっきからずっと玲奈に引っ付かれて、カッチカチではないがカッチとふにゃーんを繰り返しているような状況だ。そんなトコ入ったら、きっと長居をしてしまうだろう。


「……分かった……街を出ると草原が広がってる……小さい動物とか……弱い魔物なんかもいるよ……」

「おお。じゃあ俺をそこへ連れて行き、魔物からは守るのだ。そんでのんびり出来たらしようよ」

「……うん」


 家でもいいと思ったが、草原に寝転がり二人で風に当たる情景は、昔に戻るみたいですごく良さそうだ。玲奈にそう話すと、嬉しそうに手を握ってきた。


 そのまま5分ほど歩き、街の出入り口に着いた。門などは無く、近くに見張りの小さな小屋があり、放牧の柵のような簡素な木の仕切りで、街を隔てている。


「おお、確かにこれはいい感じだな」

「うん……この道を真っ直ぐ行くとね……農村地帯だよ……」

「へ~~」


 仕切りの向こうは緑色の草花が拡がる平原だった。遠くに幾つかの山を望み、一本の道がどこかへと続く、田舎の心象風景のような、とても穏やかな土地が広がっている。


「よくやった! こういうのでいいんだよこういうので」

「そう……じゃああの辺……小さい木が一本立ってる……あそこで休もう……」

「おー」


 200m位先にぽつんと木が一本、周囲に俺の部屋くらいの広さの草の生えていない場所があり、俺達は道を少し外れて、その場所へ向かう。

 木に寄りかかり腰を下ろすと、玲奈もすぐ隣に座り、ぴったりと身体を寄せてきた。


「ふうー」

「祐……」

「ん?」

「おちんちん見せて……」

「見せるか! お前ちょっと落ち着け? 今まであんまそういうこと無かったよな?」

「……だって祐……さっきから……」

「ああ気付いてたのね、さすが玲奈だ。でもここはお外だからな、そういうのダメなんだぞ」

「でも……」


 本当にどうしたんだろうか、玲奈も莉奈もココで会ってからは、何だか凄く攻め込んでくる。

 強くなって俺から主導権を取ろうとしてるのか、それとも何か焦っているのだろうか。どちらにせよ俺は二人に対しハッキリした意思を示す前に、手を出すなんてのは流石にちょっと、無理だと思っているのだ。


「俺もお前も初めてなんだからさ……もしするならちゃんと落ち着いてから、ゆっくりしよう、な?」

「祐……ごめん……その期待には……応えられない……」

「え?」

「私……処女じゃないよ……莉奈もそう……中学位からね……結構しちゃってるから……」

「え……?」


 草原にサアッと、冷たい風が吹いた。草木の揺れる音が、俺達の間を静かに通り過ぎていく。

 甘くカッチンを始めた俺の棒が、しなしなと元気を無くしていくのが分かる。コイツは一体何を言っているんだろう……脳が理解する事をためらってしまう。


「処女じゃないって……俺の処女は……?」

「うん……祐も処女じゃない……貫通済みだよ……」

「何言ってるか分かんないけど、そういうんじゃ無くてさ。お前……俺に処女……くれなかったの?」

「やめてよ!! ……祐以外にそんなの死んでもあげないッ!!!」

「ご、ごめんな。そっかありがとな。玲奈ちょっと疲れちゃったかな。俺の膝においで。少し目をつぶろうか」

「……膝じゃなくてお腹貸して……くっつきたいの……」

「そっか、いいぞ。ほらここ入って、帽子取ろうな。ああ、風が気持ちいい。どっかでこういう事あったよな、いつだったかな……」

「祐……」


 玲奈の頭を腹の上に置き、寝っ転ばせて、暫くツノと髪を触る。俺はなんだか狐につままれたような、不思議な感覚に陥ってしまう。


「玲奈、ちょっといい?」

「……何?」


 3分くらいそうした後、俺は玲奈の枕を辞め、今度はコイツの身体を木に預けて、足元へ回った。

 ローブのスカートの下に手を突っ込むと、手触りでパンツを探し出し、ためらう事無くそのまま引き抜いてしまう。


 玲奈は木の根元にコテンと転がった。その様子を見て俺は、スカートの裾を尻まで上げて、脚の間に体を入り込ませ、そして左右へ……大きく開いた。


「祐……」

「紫の刻印だ。かっこいいなあ」

「祐……聞いて……」

「ぼくの処女膜はどこ? ここ?」

「祐……ごめんね……でも……祐のものだからね……」

「ちょっとみせてね、れいなちゃん。わあ、すごいなあ。あけてなかをみてもいい?」

「ごめんね……ごめんね……祐……」


 中なんてあまり見てない。ただ悲しそうに光ってた気がしただけだった。

 俺は抜き取ったパンツを玲奈の手元に優しく置いて、そして一人で街の中へと戻り、家に向かって歩いた。


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