蝶の望みしもの
━━妾の一生は短しもの。
縛られとうなかった。母様のようにはなりたくはなかった。
母の腹を割り、産まれた子どもは乳母やに育てられる。母に抱かれることも無く。
およそ半年で成人し、男を選び、
中には毎晩違う男と褥を共にするものもいたらしい。
子種が出来ると、男に甲斐甲斐しく世話をされながら腹の中で育てるのだという。
2週間もすると男が腹を割き、子どもを取り出し乳母やに渡す。
そして、そのまま男に食われる。
首だけを残して。
妾は見た。歴代の女王の間を。
恍惚の表情をした美しい女たちの首が、魔法のケースに入れられ、並べられているのを。
母様は1番端にあった。妾とそっくりなその顔。
……母様、しあわせであったか?
皆、こうなるとわかっていたのにしあわせであったのか?
しあわせとはなんぞ?
子作り以上に食われるのは
だから痛みさえも快楽となりうると。
それで終いじゃ……。
1度しか子が産めぬからだ。
腹を割かれれば死ぬ。
ならばせめてもの……ということだろう。
……人間は何度でも子を為せ、自分で育てられるという。
母とはそういうものだろう。
子を産んだだけの存在を母と呼ぶには些か抵抗があったからだ。
━━妾はあがらう。人間となりて母となろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます