落ち葉が通る家

@NnmAsn

第1話伝えたい想い

「おはよう。冬慈とうじくん」


「おはようございます。相瀬あいせさん」


「相変わらずねえ〜冬慈くんところは」


「本当に。困ったもんですよ。この季節は特に」


木枯らしが吹く季節、何故か僕の家の前だけ落ち葉が溜まる。

毎朝ゴミ袋3〜5袋の掃き掃除。

それが朝の日課だ。


必死に箒を動かし落ち葉をかき集める。

その時落ち葉の感触とは違うものが箒にぶつかつた。


「あれ?」


気になって落ち葉を退けるとそこには黒い漆塗りの鮮やかな紅葉模様のかんざしが落ちていた。


「あーまたか、、、」


というのも、たまにこういうことがあるのだ。しかも捨てたとは思えない様な物ばかりが落ち葉と共にここに行き着く。

そのせいでどうもほっとけなくなるうちに家には大量の落し物で溢れてしまっている。


一人で住むには少々大きいこの家で僕は誰のものかとも分からない落し物達と過ごしている。


「あ、また?」


なぜか楽しそうに声をかけてくる彼女は隣の家の幼馴染。秋晴あきはだ。


「わあ〜綺麗なかんざし!ちょっと見せて」


「おはよう。アキ」


僕は彼女に持っていたかんざしを手渡しながら挨拶をする。


「おはよ。フユ」


彼女は挨拶をそこそこに受け取ったかんざしをまじまじと見ている。

かと思えば悪戯を思いついた子供の様にニヤッと笑って、


「やるんでしょ?」


と言った。


「はあぁ。まあな。こんな大切そうに手入れされてるもの落ち葉と一緒に捨てられないからな。」


そうなのだ。


ほっとけない性分のせいで落し物を持ち主に届けたりしていたら、なぜかそれが当たり前になってしまい、終いには落し物がうちに届く様にまでなってしまった。


近所の人からは落し物郵便屋さん略してモノヤさんと言われている。


あまり厄介ごとに巻き込まれたくはないなのだが、なんだかんだ言いつつ結局自分から首を突っ込んでるのだから世話ない。


再度大きな溜め息をつきつつ、


「なんか分かったのか?」


諦めてアキに聞く。


「んー。この裏にかいてあるこの模様、西の商店街の花のはなのいかんざし店のものに似てるような気がするんだよね。」


「似ている?そうではないのか?」


「なんかどこか違うような、、、。んー」


アキは探偵ごっこでも楽しむようにいかにもなそぶりで手を顎におき考えこんでいる。


この街には東西南北の商店街がある。

凄く賑わっているわけではないが、皆んな細々とやっている。

住民の生活の一部になっているのは間違いない。


「あ!分かった。」


アキが不意に大きな声を出す。


「ん?」


「模様だよ!模様!違和感のわけ。

花の衣店の模様は蝶の羽に梅の花が描いてある凝ったデザインなんだけど、その羽の絵の部分が桃の花なの。このかんざしは」


「あー。言われてみればそんな気がするような、、、まあ、とりあえず花の衣さんとこ行くか。」


いつからか、モノヤはアキとするのが当たり前の様になってしまった。


「そうだね〜でもまだお店開いてないんじゃない?」


「あーそっか。」


ケータイの時計を確認すると時刻はまだ朝の8時前だった。


商店街のお店の開店時間は田舎ならではなのかマチマチだ。

まあ基本的には9時前にはほとんどのお店が開いているので早いと言えば早いのかもしれない。




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