第3話 それは必然

「待って」

彼女に手首を掴まれる。


「ねえ、どうして、私が君に話をしていたのかわかる?」

返答に困った。

「すいません。それは言えません」

「どうして?」

「だって、みじめになるだけだからです」

「みじめに?」

そう、それを口にしていしまえば、ますますみじめになる。


事実は知らないほうがいい。


「いえ、答えて」

彼女の表情は、怒りに満ちていた。

僕は仕方なく、その言葉を口にした。


「冷やかしか、もてあそんでいたか・・・その辺りですね」

「そう、そう思ってたんだ・・・バカみたいだね、私・・・」

彼女は、ひどく落胆しているように見えた。


でも・・・


その直後、僕は頬を、思いっきりふっぱたかれた。

おそらく、ものすごい音がしただろうう・・・


「バカにしてないで!私が知らないとでも思っていたの?」

「何を?」

「○○くん、君の優しさを」

「優しさですか・・・僕には・・・」

「いい加減、敬語はやめて。私は君の事、恋していたんだよ」

「でも、僕に優しさなんて・・・」

「いい、○○くん。他人の心の傷みのわかる人間が、一番大事なんだよ」

「大事?」

わからなかった。思い当たることはない。


「○○くんには、自覚がないと思う。そこがまた私が好きになった理由なの?」

そして、彼女は泣きながら、僕の胸に飛び込んできた。


「みんなは認めなくても、私だけは君の味方でいる。私だけは知っている。

だから、お願い。私を助けて・・・力になって・・・」

これは演技か?さすが女優だ・・・


「○○くん、今演技と思ったわね」

「うん」

「なら演技でないところを見せてあげる」

そういうと、彼女は唇を重ねてきた。


時間は、数分はあったと思う。

でも、とてもあたたかい・・・


「○○くん、私は仕事でもキスは断ってきた。

なので、君がわたしのファーストキスなんだよ。君は?」

「同じく・・・初めてです」

今時珍しい、ロマンチックなファーストキスだった。


ドッキリか?いや、もうネガティブな考えはよそう・・・


「さきは、ビンタしてごめんね。いたかった?」

「うん、でも・・・」

ここからは、言わなくてもわかうだろう。


彼女も頷いた。


そして、この瞬間に僕と彼女は恋人となった。


周りをみると、クラスメイトがいつの間にか来ていて、

拍手をしていた。


どうやら、彼女の僕への想いを昔からしっていたようで、

今回の同窓会も、ひっつけるためだったようだ。


今では、彼女と僕は、互いに公私ともに、よきパートナーとなっている。


えっ、彼女の名前?それは・・・

「○○くん、皆には内緒」

彼女から言われたので、内緒にしておく。


でも、皆の知っている人だよ。

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白い道 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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