Phase06 人形

 長い階段を下ると、部屋が二つあった。


 片手にナイフを構えつつ、右の部屋を覗く。

 その瞬間、強烈な悪臭が鼻をついた。

 生肉を炎天下に放置したような臭いだった。


 小型ライトで部屋を照らした。

「これは酷いな」

 部屋には子どもの死体が転がっていた。十人、いや、もっとだ。狭い床に、幾重にも折り重なっている。


 一つを持ち上げてみる。

「こんにちは。今日は何して遊ぶ?」

 死体がおどけた声を出し、腕をカクカク動かした。

「うおっ!」


 俺は驚いて死体を投げ飛ばした。壁にたたきつけられた死体は、水風船のように弾け、ぬっと機械の骨格が飛び出た。

肉人形マリオネットか。悪趣味だな……」


 生きた人間に機械を組み入れ操作する技術は、倫理的観点から禁止されている。だが、その処置を行っている闇医師はいまだに存在し続けているそうだ。肉人形マリオネットに内蔵された機械は、人間が死んでも、体が腐りは果てるまで動き続ける。


「助けて……」


 部屋の奥から小さな声が聞こえた。

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