Phase05 探索

 街に入ってからの警備は無いようなものだった。生体チップタグをバス停のように道路沿いにたたずむ案内装置シティガイドにかざせば、街の管理システムにアクセスでき、ロジカル社の位置も簡単に分かった。


 しかし、ピンフと呼ばれるトップデザイナーの所在は分からなかった。街の住人たちは、一人残らず登録されているのに、ピンフと言う名前は検索に引っかからない。


「まあ、そりゃあ、隠すよな」


 案内装置シティガイドを通して、街中をくまなく飛び回る。

 港華街ガンファータウンはビジネスで日本に来た港華人たちの居住地として作られた都市だ。しかし、今や面積のほとんどが、ロジカル社の土地になっていた。

 西に作業員用の居住区があり、東は教育施設、北には商業施設と娯楽施設が並んでいる。中央にそびえる大小二棟の建物が、ロジカル社の本社ビルらしい。


 本社ビルの内側にアクセスする。

 研究施設や、会計監査室、事務室、休憩室。細かく分けられた部屋に、無数の人々がひしめいている。今の時間、この街の大人たちのほとんどは二棟ある本社ビルのどちらかに詰め込まれているようだ。


 小さい方の建物の地下に、アクセス不能なエリアを見つけた。

 ここだな。きっとここにピンフがいる!


 狙いを定めた俺は、案内装置シティガイドからログアウトして、ロジカル社の本社に向かった。

 周囲をぐるりと散策し、換気口から忍び込む。

 地下へ向かう階段の途中で、鍵のかかったドアに行き当たった。

 壁に生体認証のカメラがある。


 カメラの横をナイフで切り開き、メインシステムにつながるコード引っ張り出す。そこに、飴玉サイズのセキュリティ解析装置を貼り付ける。


 一分ほど待つと、装置の裏から人工虹彩シートが出てきた。


 俺は人工虹彩シートを目に貼り付けて、カメラをのぞき込んだ。

 すると、ドアが音もなく開いた。

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