Interphase 依頼

 俺に依頼を出したのは、サイバーアームズ社の幹部を名乗る、ずんぐり太った男だった。

「SSクラスの殺し屋だと聞いていたが、まだガキじゃないか」

 文句を言いつつ、男は眉をひそめた。


「これでも十八だ」

「十八なんてガキと変わらん」

「俺の生まれた辺りじゃ、十五まで生きれば長生きのほうだった」

 俺は童顔なうえ背が低かったから、ナメられることも多い。まあ、悪いことばかりじゃない。相手が油断してくれれば、それだけ楽に仕事ができる。


「それにしても、恒久的こうきゅうてき世界平和の世の中に、軍事会社なんて儲かるのか?」

 俺の問いに、男は、ぐふふぅ、と汚い声で笑った。

「野蛮な武器で殺し合うのが戦争じゃない。我々はサルじゃないんだ」

「ネットワーク兵器だったか?」

「いまや全世界がセントラルコンピュータで管理されている。ここのシステムを掌握できれば、世界は意のままだ。エネルギーの流れも、物資の流れも、人の生き死にも、何でも操れる。ネットワークにつながれた核兵器は世界に百万発以上あるんだ。その気になれば、世界を滅ぼすことだって可能なのだよ」


「そんなことができるのなら、俺のようなに依頼せずに、自分の手で始末をつけれたらどうだ?」

 俺の言葉に、男は動揺を見せた。ハンカチを出し、てらてら光るひたいをぬぐう。

「気を悪くしたのならすまない。我々の技術は国と国の争いには使えるが、特定の個人を対象にするのには向かないのだ。だから、君に引き受けてほしい」

「金さえもらえれば気にしないさ。で、誰を殺せばいいんだ?」


「ロジカル社を殺したいんだ」

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