編集済み 会話記録 三

 おはよう。

 ……おはよう。具合ぐあい、良くなったの?

 ……ねえ、こっちきて。

 なに?

 ほら、これ。髪留かみどめ。

 どうしたの、これ?

 あげる。

 ……いいの?

 うん

 ……ありがとう。

 気に入った?

 うん。

 はは、良かった。可愛かわいいよ。

 ……うるさい。



 ……。

 おはよう。

 ……。

 外、行ってくるね。

 ……。

 ……。

 ……髪留かみどめ、つけてあげられなくて、ごめんね。

 ……べつにいい。行ってくる。

 ……気をつけてね。

 ……。

 ……。

 ……

 ……ごめんね。

 え?

 なんでもないよ、行ってらっしゃい。



 ……。

 おはよう。

 ……。

 ……。

 ……行ってくる。

 ……。



 ……。

 おはよう。

 ……。

 ねえ、髪留かみどめ。

 ……。

 やっぱり上手うまくつけられない。

 ……。

 ねえ。

 ……。

 起きてよ。

 ……。

 上手うまくつけられないの。

 ……。

 指が上手うまく動かないの。

 ……。

 ねえ。

 ……。

 ……。



 ……。

 ……。

 ……。

 あのね。

 ……。

 髪留かみどめ。

 ……。

 最初にもらったとき。

 ……。

 本当にうれしかった。

 ……。

 私、こわしちゃったけど。

 ……。

 またくれた。

 ……。

 これ、きっと手作りだよね。

 ……。

 具合悪ぐあいわるくなってから、ずっと作ってくれてたんだね。

 ……。

 すごく、すごくうれしかった。

 ……。

 でもね。

 ……。

 どうしても自分じゃつけられないの。

 ……。

 あなたが作ってくれたものだから、つけたいのに。

 ……。

 指先ゆびさきの部品が上手うまく動かなくて。

 ……。

 へんちから入っちゃって。

 ……。

 またこわしそうになるの。

 ……。

 どうしても。

 ……。

 どうしても、つけられないの。

 ……。

 ねえ、起きてよ。

 ……。

 毎日つけてくれるって言ったじゃない。

 ……。

 ねえ。

 ……。

 ねえってば。

 ……。

 私を一人に、しないでよ。

 ……。

 髪留かみどめ、またつけてよ。

 ……。

 また可愛かわいいって、言ってよ。

 ……。

 どうして。

 ……。

 どうして、大切な人はみんな。

 ……。

 私を置いていくの?

 ……。

 どうして私も一緒にれていってくれないの?

 ……。

 どうして私はアンドロイドなの?

 ……。

 こんなにも、悲しいのに。

 ……。

 こんなにも苦しいのに。

 ……。

 どうして一緒にくことはできないの?

 ……。

 ねえ、どうして私はアンドロイドなの?

 ……。

 どうして感情なんてあるの?

 ……。

 ねえ、ねえってば。

 ……。

 髪留かみどめつけてよ。可愛かわいいいって言ってよ。

 ……。

 毎日つけてくれるって言ったじゃない。

 ……。

 ねえ、ねえ。

 ……。

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