第29話 真実は語る

「よく来てくれましたね。戦車と人型機動兵器を引っ張り出すなんて奇想天外な人達です」


 現れたのはクラスメイトの正宗明継まさむねあきつぐ。その隣にいたのは夕凪春彦ゆうなぎはるひこだった。


「君たちが異世界人だったのか」


 戦車から飛び降りた美濃が銃を向ける。しかし、正宗に動じた気配はない。


「まあ、事を荒立てたくはないのです。話し合いをしませんか?」

「学校を丸ごと消し飛ばして何を言う。話し合うと言うなら学校とさらった人員を元に戻せ」

「それはできません。あなた達が私のいう事を聞いてくれるまでは」

「要求は何だ」

「それは星子さんです。来ているんでしょう。出てきてください」

「星子をどうするつもりだ」

「いじめたりはしませんよ。私の妻として愛でるだけです」

「妻だと」

「ええ。彼女は気の毒です。同性の羽里さんや知子さんに告白され、冴えない三谷に熱を上げたりしています。気の毒でしょうがない。だから私が彼女を幸せにしてあげるのです」

「三谷のゲップは?」

「あれですか。わが国でもアレは罪になります。王が怒ったのですから罪は軽くはありません。まあ、侵攻の口実ですね。そういう事です」


 確かに、ゲップはマナー違反だがこれが国際問題になるとは思わなかった。しかし、星子を要求されては引き下がるわけにはいかない。正宗の日ごろの目つきから星子に気があることはわかっていた。


 私はこの時、徹底抗戦すると誓った。

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