#3
上司は「お前も何か言われてるんじゃないか?勧誘みたいな事とか」と聞いてきたが、勧誘はされていない。お茶に誘われているだけだと言った。
上司の顔色が変わる。
「調べたんだよ、宗教団体。この団体すげぇ悪名高い所で、お茶に誘ったりして呼び出して勧誘するんだと。そのまま車に乗せられて判子押すまで帰さない軽い拉致みたいな事もあるらしいぞ。何で連絡先教えたんだよ!?」
「だってこういう人だと思わないじゃないですか!離婚するから働くって言っていたから、私はそういう話をしたいのかなって思ったりして…。女性が離婚するのに働くって大変な事なんですよ。それに女性じゃないと話しにくいこともあるかもしれないじゃないですか…」
「あー…うん。お前狙われてるな。何かあったらすぐ報告な」
「わかりました…」
しかし事態は深刻だった。
派遣先のクライアントは自社のパートに対し被害を被っている為、彼女は問題発覚後すぐにNGを出されている。
しかし弊社との雇用契約は残っている。
この事案で解雇は出来ない。
正確にいうと彼女は勧誘時間を勤務時間以外にしていた。勤務時間外の事を私達から注意することは出来ない。
だから私にも外で会いたいという事だったのだ。
上司との話し合いで彼女は契約期間中は働けないと困る、解雇したら契約違反で訴えると主張した。
上司の見解だと、どうやら宗教団体側からそういう指導を受けているような口ぶりだったそうだ。
さらに驚いたのは彼女はこういう事を繰り返していた事だった。
上司が今までも宗教の事で仕事に影響が出た事があるかと聞いたら、彼女はあると答えたそうだ。
偶然とはいえ、大変な事案を拾ってしまったようだ。
上司達が話し合った結果、厳重注意をし、一切会話をしないという約束のもとポスティング業務をさせる事になった。
大して意味のないビラ。配った所で何の利益も生み出さないだろう。全員がそう思った。
しかし働かせずに給与を支払う訳にはいかなかった。
そんなある日家に帰るとメール受信。
彼女だ。
「なこちゃん仕事終わりましたか?今〇駅にいます。会いに来ちゃった。お茶しよ〜!早く来てね!待ってるね。」
私の自宅の最寄り駅だ。何故!?
彼女の家は埼玉のはずだ。ここまで電車で少なくとも30分以上はかかる。
身体が動かない。震える手を押さえつけながら携帯電話を取った。
#1の冒頭へ。
続
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