第三話 逃れられない闇
無理矢理忘れた。
怖かったんだ。
だから、閉じこもってしまった。
……代償を払わなくてはならない。
俺にしかもう止められないから。
□□□□□
姉貴はそのまま倒れてしまった。
「……さて、整理しよう」
自らを落ち着かせるために。
「まず、ファランド村は世界地図に載っていない、たぶん。ケモミミ奥さんがいた。たぶん、あの耳は本物だろう」
それしか情報がなかった。導き出される可能性はただ一つ。
「異世界転移か異世界転生か。転移ならば扉や穴などの何らかの物があって然るべき、だ。見ていない。じゃあ……転生? 転生ってあれだよね? 俺死んだってことだよね? この〇ばや〇ゼ〇やナ〇ツ&マジ〇クを教典にしなくてはならないのか? 確かに共通点はあるよ、イケてないにもほまどがある引き篭もりメンズだけども……。まて、それはどうでもいい。原因はナンダ? 」
俺は神様に会ってはいないし、生まれ変わってもない、何度も殺されたわけでもな……。
(……殺された? 俺は殺されたのか? 誰に? )
「……ぐっ」
ここに来てから違和感だらけだった。周りが日常とかけ離れすぎていて認識が遅れてしまった。
それが頭痛となって襲ってくる。
「……姉貴。10年は口を聞いてないはず。理想の女性像、なのか? 3次元認識出来る女性が姉貴か母さんしかいないが為に結果、姉貴に理想がくっついたのか? ……それはそれでツライ」
いや、そんなことはいいんだ。口を聞かなくなったのはアレを言ったことだけじゃ理由には……。
……俺は、姉貴の心配性が煩わしくて酷いことを言った。
『そのキンキン声が耳障りなんだよ! 』
確かこの言葉を言ってからだ、姉貴が俺の部屋に通わなくなったのは。
だからってすぐに口には出さなかった。
その前に何か発端があったはず。
━━何だった……?
思い出そうとすると酷い寒気を感じた。
けどおかしなもので、音が記憶に残っていると無意識に呼び起こされてくる。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『ここで、緊急速報です』
付けっぱなしにしていたテレビ。緊急という言い回しに、何気なく視線を向けた。
雑然として薄暗く、テレビの光源が眩しい。
『本日未明、高蔵高校の制服を着た男子生徒三名が死体で発見されました。場所は高蔵高校裏にある高蔵山山中で、犬の散歩中の男性が発見し、通報されたとのことです』
高蔵高校、男子生徒三名、死体。
いや、まさかそんなピンポイントでヤツらのわけがない。
……俺は弱かった。だから、イジメ何かにあったんだ。
小学生のころは可愛らしい悪戯程度だったように思う。
中学で軽い脅迫から軽い暴力をされた。耐えたんだ、ここまでは。
高校で心機一転しようって誰もいない所を選んだつもりだった。
俺は頭は良かったから、超難易度の高い場所に行ったわけだ。勉強バカばかりならイジメなんて無駄な時間なんて使わないだろうって。
最初の半年は楽しかった。みんないいライバルって感じで気持ちよかった。
だけど、半年過ぎたあたりから空気が一変した。
自分より成績の良いヤツの揚げ足取りを始めたんだ。頭だけで金の無いやつからターゲットになった。
うちはそのへん、平均より少し上。
ただイジメられていたから変わりたかったのに。なのにただ、自分の順番ばかり気にしている。そうじゃない。強く、強くなりたい。
弱いやつはやっぱり弱いままなんだろうか。
金持ちの坊ちゃん3人に呼び出され、気がつくと真っ白な病室を仰いでいた。
「……くん、ユウくん、ユウくん」
姉貴の声で我に返った。
「んだよ! うるせぇな! どっかいけよ! 」
まとわりついて来る姉貴が煩わしかった。
「……………」
いつもならずっと呼び続けるはずがいきなり静かになる。
━━だがしかし。
「……なんで? ねぇ、なんで? アイツらがいたから出てきてくれなかったんじゃないの? アイツらもういないよ? だからもう、怖いものなんかないから出てきてよ」
「は?! ニュースの三人がアイツらかなんてわかんねぇだろ?! たまたま高校一緒なだけだろ?! 」
姉貴は勘違いしている。そう信じたい自分がいた。
だが、俺の頭は姉貴が何かしたと警報音が鳴っている。
「え~? 違うならもう三人探さなきゃじゃない~。でも良かったぁ~、……ちゃんと死んでくれてて。大変だったけど、ユウくんがまたお話してくれるって思ったら頑張れたの! 褒めて! ユウくん! 」
部屋のドアをドンドン叩きつけながら。
前者であってほしかったのに、現実は無情だった。
「や、やめろ! 目障りだ! そのキンキン声を聞かせるな! 耳障りなんだよ! 」
……叫んだ瞬間、静まり返る。啜り泣く声と共に姉貴は離れていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
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