音響少女とガチ戦闘 1
「――――ゴメンだけど、俺にはやる事があってね! 美人さんと一緒でも、行くのはゴメンだねっ! 」
先程の変態が言った通り、ここで面倒な団体に捕まる訳にはいかない。何をすれば良いかはわからないが、目的を達成し、一刻も早く元の世界に帰りたい。
しっかしなぁ、救済って何をすればよいのやら。
「あら、美人さんなんてそんな……でも、折角褒めて頂いたのに、残念です」
ライダースーツを着た女性は、剣を構える。
向こうさんもやる気マックスか!
「――――一緒に来ないと言うのなら、犯罪者は! 鎮圧です!」
「いくぞカシマ!武装展開!」
「武装、展開」
俺だって、元は普通の日本人だ。
ある訓練を積まされたとはいえ、実戦なんて初めてだ。とはいえだ。剣を持った女の子と戦うなんて誰が想定するよ?
例え色々あったとしても、そしてイバライトをある程度使いこなしても怖いものは怖い。
だが、その為に戦闘用AI『カシマ』がいるのだ。
カシマは戦闘に特化したAIであり、緊急時には俺の戦闘をサポートする。いや、ぶっちゃけ全任せだが。
「――――イバライトシステム、戦闘モードへ移行」
俺の服は光に包まれ、青い戦闘装備へと変化する。手にするのは最新式の位相光線射出装置、フェイズライフルだ。
この戦闘服には繊維状のイバライトが編み込まれており、効率的に思考伝達が可能になる。フェイズライフルだろうが剣だろうがその場で生成できるのだ。
照準時や緊急回避時はカシマがスーツを制御するのでいざと言う時も安心だ。多分ね?
「一般市民の武装は、認められていないはずなのに。まぁヴェルトメテオールと戦うよりは遥かにマシかも? 戦闘には慣れてませんが、行くしかないですね! 」
彼女は剣を八の字に切った後、眼前に垂直で剣を構える。フェンシングの構えみたいだ。
「アクティブ! ストレプトカーパス!」
どうやら彼女も戦闘モードのようだ。
剣の中ほどまでが二又に別れ、美しい音色を奏で始める。なんだ? まるで音叉じゃないか?
「対象、ストレプトカーパス。武器から音波を検知、音響兵器の類とみられます」
戦闘モードになったカシマは冷静だ。
いつもの様に冗談は飛ばさないだろう。
《ヒタチ。ビジョンが正しければ相手は洗脳装置を所有しています。遠距離での攻撃を推奨》
優雅に剣を回した瞬間を皮切りに、俺は一気に距離を取る。
言われなくても近付かんわ!リーチは我にあり! ライフルはスタンモード、 遠慮なくブッパなさせて頂こう!
先制攻撃だ。後方へと一気に飛びながら、フェイズライフルを発射する。甲高い口笛のような音と共に、位相光線はストレプトカーパスにまっすぐと吸い込まれるように延びる。
しかし、直撃した瞬間何かにぶつかったような軋んだ音とともに位相光線は『分散』した。
「――――なにぃ!?」
まずい、これは想定外だ。
正直一発で勝負が着くと思っていた。
《なんらかの障壁を確認。フェイズライフル出力、クラス5に移行》
フェイズライフルはクラス1でスタンモード、クラス5で対戦車ミサイル、ジャベリンと同レベルの破壊力となる。
最高出力であるクラス10であれば、高層ビルを丸ごと蒸発出来るだろう。ジョイフル本田も一発よ。
まぁ、そんなモンを至近距離で撃てば、自分ごと蒸発することになるが。まぁ、その為のシールドだ。
10メートルジャンプから着地して回転、勢いを利用してそのまま右横に飛び去り、ライフルを二射目、三射目と連続で放つ。
悲しいかな、カッコよく放たれた男の子のロマン、クラス5の位相光線も儚く分散、花火の如く消え去った。
うんうん、そうだよねこういう事もあるさ。あるある――――いやねぇよ?クラス5だよ?フェイズライフルだよ?
《対象、ダメージ確認できません。この距離でライフル出力を上げるとこちらが危険です》
「了解! 何とかしてあの壁をひっぺがさないと! 」
見た限り、相手はイバライトを使用していない。俺が全く知らないシールド技術のようだ。なんて強度だ。
「うん、これはイケそうね。大人しく行動不能になってもらいましょう! 」
「「「この囁きに、耳を傾けて」」」
《やばい! 絶対なにか来きそうだ!》
《防御フィールド出力、最大》
――――彼女の剣から、美しい音が鳴り響く。まるでこれは、これは、頭が揺れて、というか脳が……?
「ガァァァァううぅァァァ!?!?」
頭をボクサーに連続でぶん殴られ、その上脳をミキサーにかけられたかの様な痛みが襲う。あ、死ぬ、まずいぞこれは!
《ダメージ、危険レベルに突入。障壁強化、音響攻撃に対処します》
防御フィールドの調節により、頭をフルシェイクしたような感覚から立ち直る。
し、死ぬかと思った!気持ち悪い……
ねぇ? 囁くって言ってなかった?完全に大音量のオンリーユーだよ?頭が爆発してたB級映画の火星人の気持ちがよく分かったわ。
《音波投射による攻撃です》
いいなぁカシマさん、この手の攻撃効かないもんね。俺は頭が爆発しそうですよ。
「これもダメ!? ならば! 」
明らかに危険そうな甲高い音が、段々と高く鳴り響く。突如、二又に別れた剣先から光線が発射され、こちらの障壁にぶち当たる。
「うおぉおおお!? 」
《フィールド維持力低下。スーツコントロール完全移行。だんな様、失礼しますわ》
スーツコントロールがカシマへと移行される。
障壁を維持したまましゃがみ込むと、真上には障壁を貫通したのであろう閃光が目に入る。
まさかイバライトで作ったエネルギーフィールドを突破するとは…………!
《先程の光線は、超音波により空気中の何らかの物質を振動させて放たれたようです。敵の武器から超音波振動を感知》
ソニックブレードかよ!?
異音が鳴り響く中、カシマはフェイズライフルを即座に分解しながら、側転、二射目の超音波光線を回避、脚を床に付けた反動で更に側宙、三射目を回避する。
「まさか普通の人間がこれを避けるなんて! あなた、本当にリベレーターではないの?」
こんなもの俺が避けられるわけあるか! 全てカシマさんのおかげじゃい!
――――ふぅ、とにかく考えろ。イバライトは思考こそパワーだ。落ち着つけ。訓練通りであればスーツは思った通りに動くはず。俺だけでも、この動きは不可能じゃない。
《カシマ、格闘戦に移行。銃は効かない、ここでクラス10を使ったらこっちもまずいだろ》
《了解》
俺の右手には青みがかった光子ブレードが形成される。
相手との距離を縮めなから、上半身を逸らして超音波レーザーを回避、足下に撃たれたレーザーを更に前方宙返りで回避する。
敵の足下まで距離をつめ、相手の剣先を真下から覗きつつ下からブレードを振り上げるが、相手の剣でブレードを弾かれ、俺の胴体が晒される。ヤバい、このままじゃ下半身とおサラバだ!
「ヤベッ!」
《障壁展開》
障壁を展開するも、彼女の剣先が迫り来る。
ああ、スローモーションで剣先が見える。
俺ここで死ぬのかな……舟和の納豆、また食いたいなぁ……。
などと考えていたその時、頭の中にフラッシュバックが過ぎる。
《死にたくないなら、船が欲しいと考えて。あれ? 確かこんなんだったよね? 》
うん。アムトリスの声だな。最期に聴くのがこの声なんて……あれ?なんか付け足されてない? 今のフラッシュバックじゃないよね?
ん?欲しいと考えて? そうだ、そうだよ!
さっきから奇妙な事が起きていたじゃないか。
理屈をすっ飛ばして欲しいものを考えれば良い!
《ダンナ様、直ぐにフィールドが破られます》
「そうか、そうだった! 俺は、俺達は勘違いしてたんだ! 難しく考える必要はない、俺は、俺の体に溶け込んだこいつは!考えろ! 考えた !」
「俺は、守りが欲しい!」
手が光りだし、同時に『守』の漢字が浮かび上がる。
フィールドが破られ、振動剣は顔面目前に迫っていたが、その刃は俺達には届かない。
緑色の壁が、俺たちを守っていたからだ。
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